ちまたの“ファッション腸活”に踊らされていない？腸の専門医が教える腸活のよくある間違い

世の中に溢れる様々な腸活情報。その情報は玉石混交で、「体にいいことをしている気になっているけど、あまり効果がなかった」どころか、「逆に腸に悪影響を与えていた」なんてことも……。そこで今回は、腸の専門医である 江田 証先生に、「よくある間違い」と「正しい情報」をセットで教えてもらいました。
 

教えてくれるのは……

 よくある間違い① 
“腸活って、便通をよくするためにするんでしょ？”

便秘が続くとお腹は張るし、オナラは増えるし、肌は荒れるし、気分も悪くなるし、ツライことが多いですよね。私のクリニックにも、便秘に悩む患者さんが多くいらっしゃいます。しかも、便秘を放っておくと寿命が短くなるという驚きの研究報告もあり、便秘を甘く見てはいけないことは事実です。ですが、便秘を治すことだけが、腸活の目的ではありません。

腸は、脳や腎臓、子宮など、体のあらゆる臓器と相互関係にあります。たとえば一見、腸とは関係のなさそうな腎臓ですが、便秘が続くと腸内細菌が作り出す毒素（尿毒性物質）が血液を介して腎臓に達し、腎不全を進行させることがわかってきました。これを「腸腎相関」といいます。

また、子宮内の炎症に腸内細菌が影響しているという報告も。腸内に酪酸菌という「善玉菌」が増えると、子宮内の炎症が改善される効果がみられるのです。このような相互関係を数え出したらキリがありません。つまり、腸を整えることは、便通だけでなく、全身を整えることにつながるのです。

さらに、ストレスを和らげ、睡眠の質を上げてくれるセロトニンは「幸せホルモン」として有名ですが、じつは、脳で作られるのはたった2％のみ。セロトニンの90％は腸で作られています（残りの8％は血液中）。

腸で作られたセロトニン自体は脳に直接作用することはないとされていますが、先ほどの酪酸菌という「善玉菌」が産生する「酪酸」という成分は、血液によって脳まで運ばれ、セロトニンの合成に役立っています。これを「脳腸相関」といいます。腸の健康は、心の健康にもつながっているのですね。

ほかにも、「腸“肝”相関」「腸“血管”相関」「腸“筋”相関」が報告されており、腸は全身の臓器の健康に重要な役割を果たしているのです。
 

 よくある間違い② 
“毎日便通があれば、体調に問題はないですよね？”

大まかに言えば、1週間に3日以上排便があり、残便感もないようであれば、便秘ではないとされています。ただ、便は腸からのお“便”りですから、よく観察せずに「流してしまう」のは実にもったいない。色や形などから様々な情報を得ることができます。

たとえば、健康的で理想的な便は、表面がなめらかで軟かいバナナ状で、色はやや黄色がかった茶色、もしくは明るめの茶色です。このような状態であれば、腸内環境が良好で、消化・吸収の速度も正常であると思っていいでしょう。

ところが同じバナナ状でも、ウサギのフンのようにコロコロしたものが合体した状態や、表面にヒビが入った状態は、あまりよくありません。また、水分を多く含んだ半固形状のものや、泥状のもの、ビシャビシャした水様状のものが出る場合も、腸からのSOSサインであることがあります。

色については、腸内に「悪玉菌」が多いと黒っぽい焦げ茶になりますし、灰白色や赤色、黒色などの場合は肝臓、胆のう、胃や腸などに問題がある場合も。あまりに色がおかしい場合は、医療機関で診てもらうことをオススメします。

このように、もし毎日便通があったとしても、自分の便が理想的な色や形でなかったり排便が快適でなければ、腸活に取り組まれることをオススメします。たとえば、毎日便が出ていたとしても、排便に55秒以上かかるのであれば快便とは言えません。目指すはトイレに座ってから「1分以内にいきまずともスルッと出て、残便感がない状態」です。

お通じがスムーズだと、それだけで気分がいいものですよね。それもそのはず、スルッと出る快便だと、脳内から「エンドルフィン」という脳内麻薬が出るのです。これは、気分を高揚させて前向きになる効果があります。毎朝快便でポジティブな気持ちで一日を始められるように努めましょう。