『NANA』『東京ラブストーリー』も“逃げ恥”を体現している?

遺産争いの件で、負けたのが梅子だとしたら、勝ったのは大庭家の人々です。しかし、最終的に幸せになれるのは梅子なのでは? と思ってしまいます。大庭家はみんながみんなわがまますぎるので、どう考えてもうまくいくはずがない。お金を得たとしても、幸せになれるのかどうか……。

『虎に翼』梅子が体現した“逃げるは恥だが役に立つ”な生き方。負けても自由を手に入れた彼女に拍手を送りたい!_img0
©︎NHK

これは、恋愛においても同じようなことが言える。

たとえば、矢沢あいさんの人気漫画『NANA』では、主人公・ハチの彼氏が、浮気をしてしまいます。ハチの友人であるナナは、「戦わなきゃ負けだぞ! てめぇの男だろ! 取り返せ!」と言うけれど、ハチは「いらない。もう顔も見たくない」と突き放した。取り戻すことが勝ちだと考えるナナと、自分を愛してくれない男を捨てることが勝ちだと考えるハチ。ハチは恋愛の勝負では負けたことになりますが、“また浮気されるかもしれない”と不安を抱きながら付き合い続けるのは、長い人生で考えたときに得策ではない。戦わずして逃げたことで、ハチは新たな恋を手にいれることができました。

1991年放送の『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)も、リカ(鈴木保奈美)とさとみ(有森也実)でカンチ(織田裕二)を奪い合い、最終的にカンチを手に入れたのはさとみだったけれど、果たしてそれは真の勝利と言えるのか? 個人的には、優柔不断なカンチをスパッと斬ったリカの方が、勝ちに見えてしまいました。恋のバトルにおいて、意中の人を手に入れた方が勝ちなのは間違いない。でも、「勝ち=幸せ」とは限りません。

『虎に翼』梅子が体現した“逃げるは恥だが役に立つ”な生き方。負けても自由を手に入れた彼女に拍手を送りたい!_img1
©︎NHK

大切なのは、勝ち負けに惑わされないこと。自分のなかの幸せが何なのかをしっかり見極めていくことなんだと思います。梅子にとっての幸せは、自由に生きていくことで、ハチにとっては、自分をいちばんに愛してくれる人とともに過ごすこと(子どもができてからは、その定義が揺らいでいきましたが……)。そして、リカは古風な妻ではなくカッコいい女であり続けることが幸せだと思っている。

大金を手にいれることや、好きな人と一緒にいることをいちばんの幸せだと考えるのなら、逃げずに戦い抜けばいい。でも、その先に自分が望む幸せが待っているのか? に焦点を当てるのがいちばん大事なんだと思います。

 

『虎に翼』梅子が体現した“逃げるは恥だが役に立つ”な生き方。負けても自由を手に入れた彼女に拍手を送りたい!_img2
 

前回記事「春ドラ『アンメット』が“今期No.1の名作”となった理由。原作や視聴者へのリスペクトが生んだ「理想的なスパイラル」を解説」はこちら>>