世界最高峰の老年医学科を擁する米マントサイナイ医科大学の医師、山田悠史先生の新連載が始まります。テーマは「脳の老化と認知症」。その進行を遅らせるために“本当に必要なこと”と“まったく必要でないこと”、そのどちらも教えていただきます。 

健康本「〇〇で認知症が治る」「〇〇で脳をキレイに」は、ほぼ非科学的。お金と時間を無駄にしないで【老年医学専門医・山田悠史】_img0
 

山田 悠史
米国内科・老年医学専門医。慶應義塾大学医学部を卒業後、日本全国の総合診療科で勤務。新型コロナ専門病棟等を経て、現在は、米国ニューヨークのマウントサイナイ医科大学老年医学科で高齢者診療に従事する。フジテレビ「ライブニュースα」レギュラーコメンテーター、「NewsPicks」公式コメンテーター(プロピッカー)。カンボジアではNPO法人APSARA総合診療医学会の常務理事として活動。著書に、『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』『健康の大疑問』(マガジンハウス)など。
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科学を置き去りにした健康本に気をつけて!


書籍『最高の老後』を上梓してから、早くも2年がたちました。それまで健康関連の書籍コーナーとは無縁だった私ですが、この本のリリース以降、帰国するたびに書店の健康コーナーを頻繁に訪れるようになりました。

そこで目にしたのは、残念ながら科学的根拠に乏しい内容で溢れる書籍の数々でした。特に認知症に関連する本には愕然としました。もちろん中には優れた本もありましたが、大半は著者の想像力が暴走し、科学を置き去りにした内容でした。「〇〇で認知症が治る」「〇〇で脳をキレイに」――。さらに衝撃だったのは、それらが数十万部という規模で売れていたこと。これらの科学的でない内容を信じて、実際に試している人がいるかもしれないと思うと、医師として心が痛みました。

健康本「〇〇で認知症が治る」「〇〇で脳をキレイに」は、ほぼ非科学的。お金と時間を無駄にしないで【老年医学専門医・山田悠史】_img1
写真:Shutterstock

私は老年医学を専門とする医師です。老年医学と言われてもあまりピンと来ないかもしれませんが、子ども特有の問題に対処できるよう小児科の先生がいるように、高齢者特有の問題に対処できるよう老年科医が存在します。そのような性格上、病院では日々、認知症の患者さんと向き合っています。

そんな日々の診療現場でも、「このサプリは認知症に良いと聞いて……」「〇〇はいつも認知症の母に食べさせるようにしています」といった話をよく聞きます。なるほど、この手の話は元をたどると書店にあるのかと、今では分かります。日々の診察では、一人一人に正しい説明をするようにしていますが、それではとても追いつきそうにありません。

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写真:Shutterstock

だとすれば、自分で書くしかない、そう決意してはじめたのがこの連載です。この連載では、間違った情報を認識し、正しい知識を得られるよう、認知症について丁寧に書き進めていきたいと思います。現場で得た知識と経験はもちろんのこと、間違いを広げないよう、裏付けとなる科学的な根拠もしっかりと確認をしながら、認知症についてのより正確な情報をお伝えします。そして、そういった正しい情報をたくさんの人に知ってもらうことで、「脳がキレイになる」といった、聞こえは良いけれど実は悪質なデタラメな情報をなくしていきたいのです。


日本では、65歳以上の4人に1人が軽度認知障害&認知症


認知症は、決して他人事ではありません。超高齢社会の日本では、軽度認知障害も含めると、すでに65歳以上の4人に1人が該当し、その数はさらに増え続けると予想されています。誰もが当事者や介護者になる可能性がある、身近な病気なのです。正しく理解して適切な対策をとれば、認知症になるリスクを下げたり、上手に付き合ったりしていくことができます。しかし逆に、間違った情報に惑わされてしまうと、リスクを下げるチャンスを逃し、お金と時間を無駄にしてしまうことになります。

今日から始まるこの連載では、認知症に関する以下のような事柄について、幅広く解説していきます。

● 実は脳の健康に悪影響を及ぼしている可能性がある生活習慣

● 高額な健康食品やサプリメント、ボケ防止グッズなどに効果はあるのか

● 日常生活の中で実践できる、認知症の予防と治療に本当に必要なこと

● 認知症患者さんとその家族が直面する様々な課題に対する具体的な解決策や相談先、現実的な費用

本連載を通じて、認知症に関する誤解や不安を解消し、科学的根拠に基づいた正しい知識と実践的なアドバイスをお伝えしていきます。
読者の皆様がより健康的で充実した生活を送ることにつながれば、この上ない喜びです。
 

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『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』
著:米マウントサイナイ医科大学 米国老年医学専門医 山田悠史
定価:本体1800円(税別)
講談社

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高齢者の2割には病気がないことを知っていますか? 今から備えればまだ間に合うかもしれません。

一方、残りの8割は少なくとも1つ以上の慢性疾患を持ち、今後、高齢者の6人に1人は認知症になるとも言われています。
これらの現実をどうしたら変えられるか、最後の10年を人の助けを借りず健康に暮らすためにはどうしたらよいのか、その答えとなるのが「5つのM」。
カナダおよび米国老年医学会が提唱し、「老年医学」の世界最高峰の病院が、高齢者診療の絶対的指針としているものです。

ニューヨーク在住の専門医が、この「5つのM」を、質の高い科学的エビデンスにのみ基づいて徹底解説。病気がなく歩ける「最高の老後」を送るために、若いうちからできることすべてを考えていきます。

 


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