では、腸もれを防ぐために、どんなことに注意すべきでしょうか?
まず「果糖」の摂りすぎは、リーキーガットを生じる原因の代表です。「果糖ブドウ糖液糖」を含んだ甘いソフトドリンクの飲みすぎには要注意です。
また腸のバリア機能を高めるために、「善玉菌」の中でも前回の記事に出てきた「酪酸菌」を育てる、豆類、穀類、果物、野菜(特に根菜)、海藻類と、「アッカーマンシア・ムシニフィラ」という「善玉菌」を育てるブドウやクランベリーなどのベリー類、そしてリンゴや緑茶を積極的に摂りましょう。
なぜ「酪酸菌」や「アッカーマンシア・ムシニフィラ」という腸内細菌を増やすと腸のバリア機能が高まるのかご説明します。
まず、酪酸菌を育てるメリットは、酪酸菌が作る「酪酸」という成分が、腸の粘膜の細胞のエネルギー源になり、腸に粘液を分泌させる機能があることです。
また、アッカーマンシア・ムシニフィラを育てるメリットは、この菌に、薄くなって傷ついた腸粘膜の細胞と細胞の隙間(タイトジャンクション)を密着・結合させ、腸のもれやすさを防ぎ、腸がスカスカになるのを改善してくれる作用があることです(しかも、酪酸菌と同じように腸の粘液を増やすことにも寄与します)。
前回、私は1日5皿(350g以上)の野菜と200gの果物を摂りましょうとお伝えしましたが、この中に上記の食材を少しずつ取り入れていただくのがいいと思います。
よくある間違い⑥
“腸活のために毎日「映えサラダ」を作っています”
野菜を積極的に食べることはいいことです。ただ、日本人には、日本人の腸に適した食事というものもあるので、ぜひ覚えておいていただきたいと思います。
それが、「日本食」と「地中海食」です。
「日本食らしさ」を表す指標に、「日本食インデックス」というものがあります。これは、
① 米 ② みそ汁 ③ 海藻 ④ 漬け物 ⑤ 緑黄色野菜 ⑥ 魚介類 ⑦ 緑茶
上記を食べるとプラス1ポイントとし、逆に、
⑧ 豚肉・牛肉
を食べるとマイナス1ポイントとして換算し、点数が高いほど「日本食らしい」とするものです。この日本食インデックスが高い食事をしている人には認知症が少ないことがわかっています。
これを見るとお分かりの通り、先ほどお伝えした2つの「善玉菌」を育てる食事がそのまま当てはまります。実際、日本食インデックスの高い食事をしている人の腸内には、酪酸菌という「善玉菌」が多いことがわかりました。
世界の食文化は、腸内細菌と密接に関連しています。
たとえばパプアニューギニアの高地人は、年に2回ほど、お祭りの時にしか肉を食べず、毎日ほとんどサツマイモだけで暮らしています。にもかかわらず、筋肉隆々の体をしています。
それは、彼らの腸の中に「窒素固定菌」という腸内細菌がおり、サツマイモを食べることで腸内に発生した窒素をこの菌が食べ、菌が作り出すアミノ酸が筋肉となっているからです。
しかし、日本人がいくらサツマイモを食べても筋肉に変えることはできません。そのかわり、95%の日本人の腸内には、海藻を分解できる腸内細菌が存在します(中国を含む世界各国では15%ほどしか存在しません)。それゆえ日本人は海藻を食べることで酪酸菌が増え、酪酸が筋肉の萎縮を進めるHDAC(エイチダック)という酵素を抑えてくれるので筋肉を保持できるのです。
つまり、自分たちが持つ腸内細菌叢に合った食生活を送ることが大切なのです。
実は酪酸菌を増やすのは「日本食」だけではありません。「地中海食」も酪酸菌を増やします。ここで、地中海食の特徴を示す「地中海ピラミッド」の内容を見てみましょう。
地中海食らしい食事も「究極の善玉菌」である酪酸菌を増やすことがわかっています。食事の際には、ぜひ「日本食」と「地中海食」を取り入れてみてください。
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