よくある間違い⑦ 
“腸活のためにグラノーラを毎朝食べるのは、みんなにとっていい習慣でしょ?”

【専門医が教える腸活】サラダより日本食と地中海食がいい。日本人の体質に合った食材の選び方_img0
写真:Shutterstock

食物繊維がたっぷりの大麦が入ったグラノーラを、発酵食品であるヨーグルトやハチミツと一緒に毎朝食べる……。とてもいい習慣に思えますよね? もちろん腸に不調のない多くの人にとってはいいことなのですが、腸によかれと思って摂るこのような食事が一部の人にとっては腸の健康を保つどころか、かえって損なわせている可能性があるのです。

もし、大麦やヨーグルト、ハチミツなどを食べると、快便どころか逆におなかが張る、頻繁にオナラが出る、便秘や下痢になるといった症状が出ているとしたら、その食材が合っていない可能性があります。

 

その原因の一つと考えられるのが「SIBO(シーボ)」です。SIBOとは、大腸にいる菌が小腸に逆流したり、口の中にいる細菌が小腸で停滞したりして、小腸の中で細菌が爆発的に増殖してしまう「小腸内細菌異常増殖症」のこと。

このような状態になると、小腸で細菌が作り出すガスがお腹にたまって、腸に炎症や腸もれを引き起こし、下痢やお腹の張り、便秘、疲労感、頭がボーッとする(ブレインフォグ)といった症状が出てきます。

お腹の不調の代表的な病気で「過敏性腸症候群(IBS)」といって、腸内細菌や自律神経の乱れなどが原因で腸の働きに異常が生じ、下痢や便秘などを引き起こす患者さんのうち、およそ3分の2もの人がSIBOを併発しているというデータもあります。

本来、腸内細菌のほとんどは大腸に生息していて、小腸には大腸に比べるとわずかな腸内細菌しか棲んでいません。それが、SIBOの人では腸活にいいはずの食材をエサにして、小腸内で異常に細菌が増え、お腹の不調を招いてしまうのです。

こういう方には、小腸で吸収されにくく、不調を招きやすい4つの糖「FODMAP(フォドマップ)」を一旦やめてみることをオススメします。

FODMAPとは、
発酵性(Fermentable)のある、オリゴ糖(Oligosaccharides)、二糖類(Disaccharides)、単糖類(Monosaccharides)、そして(And)、ポリオール類(Polyols)という糖質たちのことで、それぞれの頭文字を組み合わせたもの。

これらの糖を含む食材には、次のようなものがあります。

(O)オリゴ糖:大豆・ヒヨコ豆・豆乳・ゴボウ・カシューナッツ・小麦・大麦・タマネギ・ニンニク・柿・モモなど

(D)二糖類(乳糖):牛乳・ヨーグルト・クリームチーズ・アイスクリームなど

(M)単糖類(果糖):リンゴ・スイカ・ナシ・アスパラガス・ハチミツなど

(P)ポリオール類:トウモロコシ・リンゴ・ナシ・サクランボ・プラム・モモ・カリフラワー・サヤエンドウ・マッシュルーム・シイタケ・サツマイモ・スイカなど

誤解してはいけないのが、SIBOや過敏性腸症候群の患者さん全員にとって、これら4つの糖全てが食べられないというわけではないということ。「オリゴ糖を食べると下痢をするけれど、乳糖を食べても大丈夫」という人もいます。自分の合わない糖質を見つけ出し、それを避けるだけです。心当たりのある方は、下記のステップを試してみてください。

① 3週間、4つの糖を多く含む食品を一切摂らない。
② その後、1つの種類の糖質だけを1週間ずつ試してみる。
③ 食べた後、何を食べたらどんな症状が出たかを記録して、どの糖が合わないのかを見つける。食べられる糖質は食べ、合わない糖質は避ける。

少々面倒に感じるかもしれませんが、一度試してみれば、自分のお腹に合った食材がわかり、快適に過ごせるようになるはずです。この食事法(低FODMAP食)は、オーストラリアのモナッシュ大学で開発され、IBSに対する食事療法としては最も改善度が高いことがわかりました。米国では大規模臨床試験も行われています。

高FODMAPの食材の中でも合わない人が多いのが小麦類です。まずはパンやパスタを控え、お米に替えることから始めてみてもいいかもしれません。

以上が、よくある「腸活」の落とし穴と、新情報についてでした。自分の腸によく耳を傾けながら(私は傾聴【けいちょう】をもじって「傾腸【けいちょう】」を推奨しています)、ぜひ自分の腸に本当に合ったオーダーメイドの腸活に取り組んでみてくださいね。
 

【専門医が教える腸活】サラダより日本食と地中海食がいい。日本人の体質に合った食材の選び方_img1
 
【専門医が教える腸活】サラダより日本食と地中海食がいい。日本人の体質に合った食材の選び方_img2
 

 

【専門医が教える腸活】サラダより日本食と地中海食がいい。日本人の体質に合った食材の選び方_img3
 

『60歳で腸は変わる 長生きのための新しい腸活』
¥1540
(新星出版社刊)

“自分の寿命は自分で決められる。”今やそんな夢のような話が、現実のものになりつつあります。寿命を左右するのはズバリ「腸」。この本は、全身の老化を招く「老いる腸」から、元気で長生きできる「長生き腸」へと、あなたを導きます。カギとなるのは、長生きのための5つの「ご長寿菌」。本書では、それぞれのご長寿菌の働きや、それらを育てるための食事法をメカニズムとともに解説します。さらに、がんや認知症など年齢を重ねるほどにかかりやすい病気や症状についても、腸という観点から解説。今回の記事の内容についても深掘りしており、ミモレ世代にも、そしてその親世代にも役立つ内容となっています。


イラスト/佐々木恵子
取材・文/中田絢子
編集/國見 香

 
【専門医が教える腸活】サラダより日本食と地中海食がいい。日本人の体質に合った食材の選び方_img4
 

1回目から読む方はこちら>>
ちまたの“ファッション腸活”に踊らされていない?腸の専門医が教える腸活のよくある間違い