広島のノートルダム清心中・高等学校は、カトリックの中高一貫校。国立大学や医学部に進学する卒業生が多く、伝統のある名門女子校としても知られています。
今回ご紹介するのは、そんなノートルダム清心中・高等学校の校長を2018年から2024年3月まで務めた神垣しおりさんの著書、『逃げられる人になりなさい』です。知性と品格、そして愛を尊ぶ学び舎で、神垣さんが女の子たちに伝えたかった「がんばる」「やり抜く」以外の選択肢とは——? 本書から特別に一部抜粋して、その温かなメッセージをご紹介します。
「あなたは小さな存在なの」
20、30代の頃は、常に「もっとがんばらなければ」と肩に力が入っていたように思います。その裏側には、「私がやらなければいけない」という気負いがありました。
そんな私に自分の小ささ、謙虚さを思い出させてくれたのが、恩師でもあり、当時同僚だった今は亡き先生の言葉です。
あるとき、「自分がいなければ、クラス運営や担当業務はどうなるのだろう」と育児休暇をとることを悩んでいる私に、先生は、こう指摘してくださいました。
「あなたは小さな存在なのよ。そこは受け入れなさい。あなたがいなくても学校は回っていくの。そういう自分の小ささに気づくことも大事よ」
そのあと、「だから、休んでいいのよ」と先生はおっしゃいました。
正直にお話しすると、その言葉を聞いたときは叱られたような気になり、落ち込みました。「あなたなど大した存在じゃない」といわれたように感じたのです。
「毎日、一生懸命がんばっているのに、そんないい方をしなくてもいいじゃないか」と反発し、「自分はそんなに取るに足らない人間なのだろうか」と一抹の寂しさも感じました。
そのときは、自分という存在の弱さだけに目がいったのだと思います。
しかし改めて考えてみると、学校でも職場でも、組織というものは、ひとりがいなくなれば、ほかの誰かが動かしていくもの。「この組織は、自分がいないとやっていけない」と考えることのほうが傲慢なのです。
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