「できるかどうか」ではなく「やりたいかどうか」

明確かつ積極的なYES以外は「合意」ではない。性的シーンの撮影で俳優を支える、インティマシー・コーディネーターの役割_img0
 

インティマシー・コーディネーターは、該当シーン以外も含む台本のすべてに目を通し、内容を把握します。監督へ意図をヒアリングして、台本に書かれている内容を具体化させます。例えば「キスシーン」とだけあっても、軽いキスなのか、激しいキスなのかわかりません。そして、演じる役者の意思を確認します。
 


そのシーンを演じる役者さんたちに監督の意図やイメージを伝え、「どう思うか」とか「それを演じることに抵抗がないか」といった意向を確認することです。その時点で、どこまでがOKでどこからがNGなのかも確認しておきます。ここで大事にしているのは、「できるかどうか」ではなく「やりたいかどうか」です。同意とは、本人が明確かつ積極的にイエスと言うことであり、それ以外は同意ではないと考えています。
 
 


本を読んで、西山さんはインティマシー・コーディネーターとして、「同意」を非常に大切にしていることが伝わってきます。

たとえ一度はYESと言ったとしても、本当は迷いがあったり、迷惑をかけたくないからとか、面倒くさいと思われたくないから、という思いからそう言った可能性もあります。歪なパワーバランスの中でのYESは、本当のYESかどうか疑う必要があるでしょう。

以前OKと言ったことでも、今回もOKとは限りません。だからちゃんと毎回確認する必要があります。また、「あとになって『無理』と覆す権利がある」と伝えるようにしているそうです。あとあと後悔する、ということは誰しもあると思います。後悔したとしても、YESと言ったのは自分なのだから、覆してはいけないと思ってしまうのではないでしょうか。

だからこそ、“明確かつ積極的なイエス”以外は同意ではない、やっぱり嫌だと思ったら覆していいという指針は、とても重要だと思います。