話は戻って、日本語掲示板サイトで現在の家の広告を見つけた時のこと。実は、「これだ〜!」なんて気持ちは微塵もなかった。たまたま条件的には当てはまっている感じだし、とりあえずメッセージを送っておこう……という程度の興味だった気がする。ところが、メッセージを送った数十分後にすぐ電話がかかってきて「いつ見に来られる? 今日は?」と言われてびっくり。さすがに今日の今日は無理だわとお伝えしたものの、あれよあれよという間に翌日の内見が決まった。

「パリで新しい暮らしを始めます!」お気に入りの我が家が窮屈になったワケ【Mamikoの住み替え備忘録】_img0
薄い黄色の壁がどこか南仏のようで、評判のよかったリビングルーム。パリで最初に住んだこの家が、壁といえば白、という思い込みから抜け出せたきっかけになりました。

以前もどこかで書いたと思うけれど、現在のアパルトマンは近代建築といわれる日本の住居に似たシンプルな造り。それまでの2軒はオスマン建築という、いわゆる皆がイメージするパリのアパルトマンに住んでいたから、翌日訪れた際は、正直かなりがっかりしてしまった。天井も低いし、シュッと美しい縦長の窓もない。それなのにこの家に住むことを決めたのは、夫の「こんなに日当たりがいい家はパリにそうそうない。内装も自分たちできっと可愛くできるよ」と言う言葉だった。

 

半信半疑で住み始めてみた家はしかし、彼の言うように非常に快適であることが判った。そもそもオスマン建築というのは造られてから100年以上経っている、修復に修復を重ねて存続している建物。それゆえ水回りや間取りなど、色々不便な部分があることが多い(もちろんお金に糸目をつけていない、高級アパルトマンは除外)。その点、近代建築は無駄なく、効率よく建てられている。素敵ではないけれど、一般庶民的な住宅事情から考えると、安心度が高い気がしている。

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お気に入りの部屋を飾るべく、蚤の市で購入してきた絵や小物たち。

そして住んでみると、夫の言っていたとおり日当たりの良さがいかに貴重であるかということも理解できた。なぜならフランスはとにかく、冬が長い。今年も夏らしくなったのが6月後半だったけれど、10月〜6月ぐらいまでずっと冬みたいな気候が続く。どんよりとした雲に覆われていてずっと寒い。フランス人は冬の曇天からうつ病を発症する人が多いらしいなんて話も聞いて、日照の大切さを切実に感じた。