メイクやスキンケア用品を扱う化粧品ブランドOSAJI(オサジ)は、ほとんどの店舗に「ブラインドメイク」に対応した特別なBAさんがいます。

一般社団法人日本ケアメイク協会のHPによると、「ブラインドメイクとは視力に障がいのある人が、鏡を見ずに自力でフルメイクができるという技法」とあります。ブラインドメイクって何? そして、ブラインドメイクの取り組みをOSAJIで始めたのはなぜなのか? OSAJIメイクアップアーティストの後藤勇也さん、OSAJI企業広報の酒井陽子さんにお話を伺いました。

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OSAJIメイクアップアーティスト 後藤勇也さん
直営店やOSAJI取り扱い店舗でお客様へのメイクレッスンを中心に、スタッフへのトレーニングや撮影業務、メイクアイテムの開発などに携わる。

 

視覚障がい者にメイクレッスンを行う「UBA」とは?


——OSAJIでは、視覚障がい者の方に向けたブラインドメイクを店頭でアドバイスする取り組みをされているそうですね。

酒井陽子さん(以下、酒井):OSAJIのほぼ全店に「UBA -Universal Beauty Adviser」(ユニバーサル・ビューティー・アドバイザー)の資格取得者がいます。UBAは今まで「化粧指導員」という名称でしたが、この5月に名称を変えました。理由は「化粧訓練士」と、名称と役割が混乱するのを避けるためです。

「UBA」は、店頭での化粧品選定と、購入した化粧品の使用法を教えることのできる資格です。一方、「化粧訓練士」は、ブラインドメイクを視覚障がい者に指導する専門知識と技術を身につけ、実際に指導できる人のこと。化粧の指導だけでなく、衛生管理知識、目の構造や感染疾患、皮膚感染症についての知識や、他疾患に関する化粧療法についての知識も持ち合わせています。OSAJIのスタッフが持つのは、UBAの資格になります。

——「UBA」というのは最近変わったばかりの名称だったのですね。

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8月に開催された店舗実習では、日本ケアメイク協会理事の山岸加奈子さんら、全盲当事者の方をお客様にOSAJIのUBAが秋の新作アイテムをおすすめしている様⼦。(写真提供=OSAJI)

酒井:そうなんです。私たちにブラインドメイクの指導をしてくださる、一般社団法人日本ケアメイク協会と協議の上で変更しました。日本ケアメイク協会には、OSAJIの創業者でブランドディレクターの茂田(正和)も副理事として参画しています。

ちなみに協会の理事長は山岸加奈子さんという全盲の当事者の方で、山岸さんは大学生の頃まで目が見えていました。考えてみれば、これまではメイクをして外出していたのに、突然見えなくなったからといってノーメイクで外出するというのは、女性として結構勇気がいることですよね。山岸さんもそんな不安を抱える中で「ブラインドメイク」の存在を知り、熱心に学ばれたといいます。そうして、今では見えていらっしゃるんじゃないかなと思うくらい、スムーズかつ美しくメイクをされていて、講習を受けている私たちがびっくりするほどでした。

OSAJIの講習では、メンバー同士が「目が見えないお客様」と、「目が見えないお客様にメイクアイテムの使い方を伝えるUBA」の立場に分かれて実際にメイクしてみるのですが、なかなかうまくいかないんですよね。そのぐらい、ブラインドメイクの指導にはテクニックが必要なんです。

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5月に開催された⽇本ケアメイク協会によるブラインドメイクの講習会。両手指を使って口紅をどう塗るか教わっている様子。(写真提供=OSAJI)

——「UBA」と「化粧訓練士」は異なる、と先ほどおっしゃっていましたが、「化粧訓練士」の方はどのくらいいらっしゃるものなのでしょうか。

酒井:ブラインドメイクの指導をする資格は段階で分かれていまして、UBAの上に「化粧訓練士」の資格があります。化粧訓練士は現在、全国に57名ほどいらっしゃるのですが、ほとんどは眼科医や看護師など、医療従事者の方たちです。

化粧品販売店に勤務しながら化粧訓練士になられた方は、「お客様のメイクのことなら、私たち化粧品販売店に任せてください」と言える環境にしていきたい——そんな思いで資格を取得されたそうです。OSAJIとしても、そうした方たちのサポートもできたらとは思っていますね。ちなみにこの夏、OSAJIでも1名が化粧訓練士の資格を取得しました。