「化粧訓練士」をOSAJI社内に

後藤:2年前にブラインドメイクの講習を受けたとき、講師の方が盲導犬のワンちゃんを連れてこられました。施設やお店など、盲導犬が同伴できる場所と同伴できない場所がある、というのは何となく知ってはいたものの、講師の方とランチするために予約しようとお店に電話をかけたのですが、10件中9件にお断りされてしまいました。

目が見えなくても車椅子でも「メイクのわくわく感」は平等に。化粧品メーカーが気づいたコスメカウンターのバリア_img0
5月に開催されたブラインドメイクの講習会にも、盲導犬のワンちゃんが参加!(写真提供=OSAJI)

中には、「盲導犬です」と説明しても、「うちはペットはちょっと」と言われてしまって。結局、いろいろあって予約は取れず、お弁当を買ってきて講習会場で食べましょう、となりました。これが現実なんだ、とびっくりした出来事でした。

——そもそも、視覚障がいがあると、なかなか街に出かけにくい、化粧品売り場に行きづらいという部分があるのかもしれませんね。今後の展開で目標はありますか?

酒井:店舗運営チームのマネージャーが女性なのですが、自ら進んで「化粧訓練士」の資格を取得しました。

※化粧訓練士とは…ブラインドメイクを視覚障がい者に指導する専門知識と技術を身に着けたもので、化粧の指導のみでなく、当事者理解、衛生管理知識や眼の構造や感染疾患、皮膚感染症についての知識を習得し、一般社団法人日本ケアメイク協会で化粧訓練士と認定したもの。化粧訓練士には医師、看護師、視能訓練士など医療従事者だけでなく、介護士、エステシャンや美容師も在籍。

彼女が訓練士の資格を取得したことで、私たちも彼女から学ぶことができる。これまでの講習は日本ケアメイク協会に協力いただく形で開催していましたが、講師のみなさんは本業も忙しいなか指導してくださっていました。社内に「化粧訓練士」が在籍することで、よりブラインドメイクの技術と知識が、日常的に磨かれるきっかけにもなると考えています。

 

化粧品売り場を、誰もがわくわくできる場所にできたら

目が見えなくても車椅子でも「メイクのわくわく感」は平等に。化粧品メーカーが気づいたコスメカウンターのバリア_img1
後藤さんは「障がいのある方も、もっと気軽に商品を試してもらえるように」と語ります。

後藤:最近、OSAJI以外の同業者から「ブラインドメイクって何?」「UBAって普通の人でも取れるものですか?」と聞かれる機会がありました。他の化粧品ブランドのメイクアップアーティストに聞いてみたら、UBAという「資格」のことは知らなかったけれど、ブラインドメイクの“ボランティア”に参加したことはある、という人もいて。UBAを知っているか否かにかかわらず、行動していることが素晴らしいなと思った一方、UBAの資格制度自体がもっと広まってほしいとも感じました。化粧品ブランドで働く方やメイクアップアーティストをしている方は、実は興味を持っている人も多いのではないかと思います。

化粧品フロアを見に行ったときに、気になっているアイテムを触って試せるように、障がいを持つ方たちも、もっと普通にコスメを手に取って試してみたいと思ってほしい。OSAJIだけでなく、各化粧品ブランドにもUBAや、UBAのような知識を持つ人が1人ぐらいはいて、化粧品フロア全体がもっとわくわくできる場所になっていったらいいなと思います。
 


撮影/加藤夏子
取材・文/ヒオカ
構成/金澤英恵
 


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