なぜこんなことになってしまったのか。そもそも、イギリスでは7月の総選挙で中道左派の労働党が勝利し、右派の不満が高まっている状況でした。そんな中で起きたサウスポートの事件が反移民や反イスラムの感情を煽る材料として利用されてしまったのです。極右グループのフェイクニュースはSNSを通じて拡散。反イスラムを掲げる極右グループ「EDL」(現在は解散)の創設者であるスティーブン・ヤクスリー・レノンによるXの誤情報投稿は、100万人以上のユーザーにリーチしたといいます。

またXのCEO、イーロン・マスクがこれらの反移民を主張する投稿に対し「内戦は避けられない」とツイートしていたことも問題に。イギリスのスターマー首相は「暴動の参加者だけでなくオンラインで暴力を煽動した者にも法の裁きを受けさせる」と発言、首相官邸はイーロンのツイートに対して「そのような発言を正当化することはできない」と非難しています。

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8月7日、ロンドン市内で行われた人種差別や反移民に対する反対集会。写真:AP/アフロ

この暴動と反移民デモを受けて、現在イギリス各地では人種差別や移民排斥への抗議デモが活発化。実際には「我々は移民を歓迎する」と訴えるイギリス人たちも大勢いるのです。

イギリスの分断と対立が改めて浮き彫りになったこの一件ですが、今度はテイラーのオーストリア・ウィーン公演でのテロ攻撃計画が確認され、公演中止となる事態が発生しました。SNSでテロ計画を投稿していたふたりの容疑者のうち、主犯格の19歳の男性は過激派組織「イスラム国」(IS)に忠誠を誓っていたとのこと。今月8〜10日に予定されていたコンサートでは1日に約6万5千人の来場を見込んでいたといい、集客力のあるテイラーのライブが狙われた形に。

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8月8日、テイラー・スウィフトのコンサートが中止となったオーストリアの首都ウィーンの中心部で、ファン同士の友情や連帯を示すブレスレット交換を楽しむファンたち。写真:AP/アフロ

今年3月にもISがロシアのコンサートホールを襲撃し140人近くの死者を出すという悲劇が起きているほか、2017年にはイギリス・マンチェスターで行われたアリアナ・グランデのコンサートで22名が亡くなる自爆テロが発生。このときにもISが犯行声明を出していますが、関連はわかっていません。
 

 


現在ヨーロッパを中心に広まる反移民感情ですが、こうしたフェイクニュースや情報操作によって群衆が煽動されてしまう状況は本当に怖いですよね。そしてこのようなテログループの犯行が、さらに反移民や人種差別などのヘイトを増長させる……。

多くの女性たちをエンパワーメントしてくれるテイラーがヘイト活動に利用されるだなんて、絶対にあってはいけないこと。平和の祭典であるオリンピック開催中に起きた、悲しい事件。憎しみのループに巻き込まれないように、せめてフェイクニュースを見極める目を持っておきたいと、強く思うのでした。
 

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