高齢者とキャッシュレス決済


筆者の周りでも若い世代は電子マネーの利用が盛んで、娘なども「ポイントが貯まるのに現金払いなんてありえない」と言っています。ただしそれは若い世代の話。70代になるとキャッシュレス決済の比率はグンと減り、70歳以上で「キャッシュレス決済を使っている」と答えた方は29.7%にとどまっています(消費者庁「令和3年版消費者白書」より)。

そもそも日本は決済サービスが乱立しており、どれを使ったら良いのか……という初期段階でつまずきがちです。最も利用率の高い「クレジットカード」でさえポイント還元率を考え始めるとキリがなく、三井住友銀行のOliveフレキシブルペイ、楽天デビットカードなどの「デビットカード」、Suica、PASMO、ICOCAなどの「交通系電子マネー」、WAON、nanaco、楽天Edyなどの「流通系電子マネー」、iD、QUICPayなどの「クレジットカード系電子マネー」、PayPay、d払い、楽天ペイといったスマホを使った「QRコード決済」など、細分化していくと若い方でも混乱するかもしれません。

 

シニア世代はクレジットカードにはまだ馴染みがあるものの、60代を境にスマホを使った決済をする人はぐっと少なくなります。スマートフォン決済は支払いが簡単でより多くのポイントを獲得できますが、設定が煩雑なので60代を境に敷居が高く感じるようです。不正利用に対する補償は受けられるものの、巧妙な手口で情報が盗まれることもあるため、まだまだ現金利用が多いのが現状です。

では、果たしてそんなシニア世代に向いている決済方法はあるのでしょうか。今回の相談者・菜々子さんのご両親は、次のような要望を出されていて、おそらく多くの親御さんも同感と思われます。

① スマートフォンは使い方が難しいので嫌
② 新しいことを覚えたくない
③ 知らないうちに使いすぎるのは困る
④ 不正利用は避けたい
⑤ ポイント還元は嬉しい

このあたりを考慮すると、シニア世代には流通系電子マネーが良さそうです。

シニアにオススメの「流通系電子マネー」

筆者イチオシのシニアにオススメのキャッシュレス決済「流通系電子マネー」は主にWAON、nanaco、楽天Edyの3つです。

① WAONカード
【使えるお店】イオン、ダイエー、マックスバリュ、マルエツ、ファミリーマート、ローソン、ウエルシア薬局、ハックドラッグなど、全国約140万ヵ所
イオンやマックスバリュなど、イオングループの商業施設が生活圏内にある場合は、WAONカードが便利です。買い物などに利用できるポイントが貯まる上、レジでもチャージできるので機械操作が苦手なシニアでも安心。ネットスーパーの利用料やヤマト運輸の配送料などは宅配便ドライバーが携行する端末でも決済できますし、ミニストップでは公共料金の支払いも可能です。さらに55歳以上の方には、毎月15日に5%オフになる「G.G WAON」というお得な制度も用意されています。

② nanacoカード
【使えるお店】イトーヨーカドー、セブンイレブン、サンドラッグ、スギ薬局など、全国125万店
イトーヨーカドーやセブンイレブンが生活圏内の場合はnanacoカードが便利です。こちらも店舗チャージが可能で、イトーヨーカドーやセブンイレブン以外にも、スーパーや飲食店、ドラッグストアなどさまざまなお店で使えます。ただ、こちらはネットスーパーの支払いにnanacoやシニアナナコが使えない点が少々残念ではあります。

③ 楽天Edy
【使えるお店】西友、東急ストア、マツモトキヨシ、高島屋など、全国135万カ所以上
イオンやイトーヨーカドーなど特定の店舗に縛られたくない、もっと幅広く使えないと意味がないとお考えであれば、楽天Edyはいかがでしょうか。地元のスーパーなどと提携していることも多いので、ぜひ加盟店を確認してみてください。コンビニなど、一部の楽天Edy加盟店ではレジで現金チャージが可能です。


介護現場におけるキャッシュレス活用

キャッシュレス化は、介護の現場でも進んでいます。一例を見ていきましょう。

・介護保険料の支払い
介護保険料もキャッシュレス決済が可能ということをご存知でしょうか。ただし、利用できるのは介護保険料の納付方法が普通徴収(納付書払い)の方のみ。多くの方は特別徴収(年金からの引き去り)で、この場合はキャッシュレス決済を利用できません。また、特別徴収から普通徴収への変更も不可となっています。

・介護タクシー
タクシー会社の多くがクレジットカード決済を導入しており、介護タクシーでも少しずつカード決済可能な業者が増えてきました。介護タクシーは同乗者が支払うことも多く、クレジットカード払いを希望するケースが増えています。今後は増えることはあっても減ることはないのではないでしょうか。

他にも、一部の高齢者施設における月額利用料の支払い、福祉用具貸与、病院での医療費の支払い、調剤薬局での支払いなどにキャッシュレス決済が導入されています。

また、少し前の話にはなりますが、介護保険事業における「特定福祉用具販売」と「住宅改修」を対象に、中小企業でキャッシュレス決済をした場合のみ、5%のポイント還元キャンペーンが行われました(2019年10月~2020年6月に実施)。政府は今も「キャッシュレス決済を活用して生活を便利に!」とアピールしており、今後も介護保険絡みで何かしらの還元があるかもしれません。情報に注意していきたいところです。