結婚式当日に見た「未来の自分」
「結婚式の2週間ほど前に入籍し、同居が始まりました。夫はギリギリまで一人暮らしをしたがったので慌しかった。
元いた部屋もまだ数週間契約が残っていて、荷物が云々とかで新居を空けることも多かった。このときはとにかく入籍、同居、そして親族を巻き込んだ結婚式を挙げてしまえば彼を独占できる、あと少しの我慢……と思っていましたが、その結婚式前夜から連絡が取れなくなったときはさすがに半狂乱になりました。
また例に出しますが、SEX AND THE CITYの映画で、キャリーがビッグに結婚式をすっぽかされたシーンのような。夫の場合は、首に巨大なキスマークと、腕に歯形のような傷を作って朝方にヘラヘラ帰宅したんですけどね……」
吐き捨てるように由紀子さんがそう言ったとき、筆者は思わず絶句してしまいました。
由紀子さんはこのときも深く追及はせずに寝不足のまま結婚式に向かったそうですが、どうやら婚約前から関係のあった元アイドルの女性と続いていたよう。
「私の想像ですが、おそらく結婚したのがバレて、私と同じように発狂した彼女に噛みつかれたんじゃないでしょうか。首もキスマークを超えて巨大な血痕みたいになっていて、メイクさんが必死に隠していました」
冷静に考えれば、この状態で結婚に踏み切ることはさすがにないのでは……と思いますが、当時の由紀子さんのゴールは結婚であったので仕方がありません。
「絶望する中でも結婚式って不思議なもので、家族の前で愛を誓い、友人の作ってくれた動画やお祝いの言葉、定番の結婚式ソングなんかを聞いていたら、そのムードにほだされて『ああ、やっと幸せになれる』『やっとここまで来たんだ』としんみりしていました。
夫にも『これからは絶対に由紀ちゃんを幸せにするから』と言われ、最後に選ばれたのは私なんだと幸せに浸っていたら……式の歓談中に、ちょっとした騒ぎが起きたんです」
信じ難い話ですが、なんとことのき、ゲストに挨拶に回っていた新郎の父親が由紀子さんの友人のお尻を触ったとのことで、ちょっとした揉め事が起きたというのです。
しかし結婚式の最中ということもあり、思わず「キャー」と叫んでしまった友人は事を荒立てず、スタッフも仲介してその場はおさまったと言いますが、戸惑いながらも遠目で見守るしかできなかった由紀子さんの目に映ったのは、酔ってヘラヘラしている義父、そして恥ずかしそうに必死に頭を下げる義母でした。
そして、これはきっと自分の未来だと思わずにはいられなかったそうです。
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