認めて許して、夫婦をつくる

「気に入らん部分は目をつむるの」。103歳の哲代おばあちゃんが語る、夫婦が添い遂げる秘訣_img0
墓に眠る良英さんに語りかけながら落ち葉を掃き集める哲代さん(2021年10月撮影/中国新聞社)。

私たち夫婦には子どもがいませんでした。それで「夫への申し訳なさ」がいつも心にあったんでございます。

子どもができんのは男の人のほうにも原因があるかもしれんって、今じゃあよう聞きますね。じゃがね、当時の私にはそがあなことは分かりません。全部、自分が悪いんだと思っておりました。良英さんがお酒を飲むのも、そのせいじゃないかって。月給を飲み代に使うのも、うさのはけ口だと思うてしまって。立場が弱いっていうかね、強くはよう出なんだんです。仕方がナイチンゲールです。

 

でもね、良英さんは「そがいに思い詰めんでいい」って言ってくれたことがありました。私のことを責めたり、追い込んだりしたことは一度もなかった。良英さんもやっぱりしんどかったと思います。後継ぎがおらん寂しさや不安を私と同じように感じとっちゃったはず。そんな痛みを分かち合いながら夫婦で年を重ねてきました。そういう連帯感みたいなもんに、私は支えられとったんかもしれんなあと思うんです。

良英さんは晩年、脳梗塞を患って自宅の洋間に置いた寝台に寝ていました。地域の仲間が集う「仲よしクラブ」に行ってくるよって声をかければ「おうおう」って送り出してくれて、帰ったら練習した踊りを踊って見せたこともありましたねえ。終わりに向かうほど良英さんは優しく、まるうなっていった気がします。

自宅で介護を続けていましたが、最期は入院したんです。ルール違反かもしれんけど、亡くなるとき、お酒を少し口に含ませてあげたんです。私の腕に抱いて。そうしたら、あがなええ顔したことないくらいににっこりしてね。こっくんって音までさせて。「早う家に戻ってようけ飲みましょうで」って言ったら、またにっこりして。しばらくして、静かにすーっと旅立っていきました。