東大のジェンダーバランスは政治・経済に反映
このように、多様性とはかけはなれた東大の現状ですが、ごく一部の優秀な人の世界の話、と感じるかもしれません。しかし、これは「東大だけ」の問題ではありません。
「令和元年度雇用均等基本調査」によると、総合職における女性比率は20.1%とかなり低く、有名企業に絞って見てみても3割程度にとどまっている会社が多いことがわかります。(中略)「採用」段階での男女差を縮めるためには、より多くの女性学生に総合職に応募してもらう必要がありますが、難関大学の学生を多く採用する企業からすると、人材の供給源である大学での男女比が偏っているのであれば、採用結果も偏ってしまうのは当然の帰結といえます。
(『なぜ地方女子は東大を目指さないのか』 江森 百花 川崎莉音 著、光文社)
また、政治においても、出身大学別国会議員の数は東京大学が1位(女性議員に絞っても東京大学が1位)だそうです。国会を見るたび、あまりの男性の多さに驚くことが多いですが、東大の女性比率が変わらない限り、国会議員の女性比率も増えないのかもしれません。
このように、東大のジェンダーバランスは、政治や経済にも反映されているのです。東大教授の本田由紀氏は、「東大の卒業生は政財界で権限を持つ立場に就く確率が高く、社会の骨格作りに大きな影響を及ぼしている」(朝日新聞デジタル「東大卒業生の価値観は?男女差は? 競争、家事…本田由紀教授が調査」)と指摘しています。
では、なぜ東大の女性比率は一向に改善されないのでしょうか。『なぜ地方女子は東大を目指さないのか』(江森 百花 川崎莉音 著、光文社)では、地方女子に、「実力の過小評価」「浪人回避傾向」「安全志向」といった要素があると分析しています。
「実力の過小評価」
元々、行動経済学の研究では、思春期の女子学生は男子学生より能力に対する自己評価が低いことが明らかになっているそうですが、加えて、地方女子学生は、地方男子学生、首都圏女子学生、首都圏男子学生に比べ、自己評価が低く、合格可能性を低く見積もるという調査結果が出たそうです。
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