高齢者が災害時に持ち運び出すべきもの


皆さんは自宅に防災セットを準備されていますか? 今は必需品が入ったリュックタイプのものが定番としてよく紹介されますが、手軽なものの、身体の衰えたシニア世代には少し重たいかもしれません。高齢者のみの世帯の場合は、この重さが避難のリスクになることだけは避けたいものです。

災害が起こると避難所へと誘導されますが、避難所には初動対応用備蓄品として、食料や飲料水のほか、アルミ毛布や携帯トイレなどの生活必需品が通常配備されています。

内容は自治体ごとに異なりますが、倉庫にも食料や飲料水、資器材が配備されていて、避難者の数などに応じて各避難所に搬送されます。これはあくまでも筆者の提案ですが、このようなものは避難所に任せ、高齢者ならではのものを準備しておきましょう。例えば以下のようなものです。

【シニア世代が持ち出したい非常時の避難セット】

①貴重品・・保険証、お薬手帳、保険証券、通帳のコピー、家族の連絡先を書いたメモなど
②避難用具・・軍手、防災頭巾
③医薬品・・絆創膏、持病の薬など
④生活用品・・入れ歯、老眼鏡、補聴器、タオル、トイレットペーパー、リハビリパンツなど
⑤洗面用具・・歯ブラシ、入れ歯ケース、洗浄剤など
 

リハビリパンツなどのオムツや尿取りパッドは後処理が楽です。トイレが使えない場合や混雑も考えられるため、普段は自立排泄ができる方も数枚は準備しておくと安心かもしれません。

また、災害時は家族が必ず一緒にいるとは限りません。高齢者だけで避難する際、両手が使えるリュックが本当はベストですが、手が上がらない、回らないということも考えられます。その場合のオススメはスーパーのレジ袋です。

これを3枚くらい重ねておけば、いざというとき汚れ物入れにもなります。その中に必要な範囲で先ほどの避難セットを入れておいてください。そして、ばらまかないように持ち手を緩く1回縛っておくこと。それを下駄箱の中でも構わないので、必ず玄関においてください。避難時は玄関を通る可能性が一番高いためです。その際、歩きやすい靴を横に置いておくこともお忘れなく。

他に日ごろから心がけたい防災対策としては、自宅内の大きな家具は固定する、出入り口や通路にモノを置かないなど、自宅を安全な状態にしておくこと。また、地域の防災訓練があれば参加して、町内会や民生委員の方と顔見知りになることも、高齢になればなるほど大切です。

 


気になる!老人ホームの災害対策


最後に、相談者・美咲さんの義両親が入居を検討されているという老人ホームの災害対策についてもご紹介しておきましょう。老人ホームには、基本的に身体の不自由な高齢者が多く暮らしていますが、高齢になると危険を認識できない、パニックを起こしやすいという傾向があります。老人ホームで災害が起きた時に考えられる問題は以下のようなものがあります。

■病気や筋力・体力の衰えから、自力での避難が難しい人が多い
■インターネットやSNSに不慣れで情報収集が困難な人が多い
■避難所生活に適応できない場合がある

過去には、認知症の方が状況を理解できずに避難を受け入れず、頑なに動こうとしなかったケースもありました。安全な場所に自力で非難するのが困難だからこそ職員のサポートが重要なのに、そのような状況に陥ると被害が大きくなってしまいます。そのため、老人ホームでは他の事業以上に念入りに防災対策をしています。

たとえば、災害発生直後は以下のような対応をしています。

■入居者と職員の安否を確認
■入居者を集める
■扉や非常口、窓の開放など避難経路の確保
■エレベータの閉じ込め確認
■水、食料、生活証文品などの備蓄品をまとめる

災害時は停電など不測の事態が起こることがあるので、施設では早めにこのような対策を取っています。また、地震だけでなく、台風なども考慮した災害の備えとして、日ごろから停電、断水、ガス停止、浸水、交通網、通信、移動手段、連絡手段のチェックも行っています。


老人ホームで確認したい避難場所と災害対策


すでに老人ホームに入居している場合は、避難場所は決まっているのか(各階ごとか、上階か、下階か)、災害対策の方針など、機会があるときに確認しておくと良いでしょう。

親が老人ホームで暮らしていると、自分がその場にいない限りは腹をくくって任せるしかありません。そこでせめて、施設からの緊急連絡手段は確認しておきたいところ。電話でもLINEでも、連絡先として必ず施設名を携帯に登録しておいてください。入居だけでなく、デイサービスなどを利用している場合も同様です。見知らぬ電話番号だったために緊急時に出なかった、確認が遅れた、といったことがないようにしておきましょう。

つい「自分だけは大丈夫」と思いがちですが、日本に住んでいる限り、どの地域でもいつ何時、災害に見舞われるかわかりません。防災の日という年に一度のこのタイミングで、改めてご自宅の環境や防災グッズを整えてみてはいかがでしょうか。


構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
イラスト/Sumi
編集/佐野倫子

 

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