夫「おつかれさま。そっか。ありがとう。いつまでも、そう言ってもらえるように頑張るよ。雨はやんだかな。いってきます」
かわいい人だなぁ、と思った。
溜めておいて、まとめて話すのではなく、このちょこちょこと毎日、不安や疑問を解消していくのが、夫婦の会話のミソではなかろうか。
さらに、恥ずかしくて顔を見て言いにくいことも、夫はメッセージでは言ってくれた。
初めての結婚記念日の朝、起きてみると
夫「1年間ありがとう。色々あったけど、結婚して本当によかったよ。今まで通り、協力して楽しい家庭にしようね。これからもよろしくです」
と書いてあり、キッチンカウンターには花束が置いてあった。実は私は、結婚記念日のことを忘れてしまっていたので、びっくり。そのマメさと優しさに感激した。
そして、ホワイトボード日記が一番沁みたのは、不妊治療の間。結婚して間もなく始めて、数年間、本格的にがんばった。何度もトライしてはダメ、トライしてはダメ、を繰り返すため、回数を重ねるごとに心身に堪えてくるのだ(この話だけで膨大なストーリーがあるので、それはまたいずれ)。
その通院の中で、医師からキツイ言い方をされて傷ついた翌朝だった。
夫「おはよー、昨日は大変だったね。少し元気になったかな? 最近、美紀ちゃんと結婚できてよかったなって、本当に思うよ。今日も元気で、がんばりましょ! たい焼き、よかったらチンして食べてね」
ああ、元気出そう、と思った。絶望しかけて硬く冷たくなった気持ちに、希望の種火を再び灯すのは意外と、こうした、ほんのちょっとした言葉や気遣いだったりする。こういうところに思いが及ぶ人と結婚できて、本当に良かった、と思った。
ホワイトボード日記は、夫が独立して生活パターンが変わるまで3年ほど続いた。週6日と考えると、ざっと数えても600回以上のメッセージが行き来したのだろうか。ともすれば空気のように消えていってしまう夫婦の会話がこうして残っているのは、今となってみると財産だ。夫婦間にちょっとモヤモヤした空気が募ったときも、これを見返すと、ほっこりと優しい気持ちを思い出すから。そして、この財産を礎に、二人は本当に“相棒コンビ”になっていくことに。それはまた次回。
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