フリーアナウンサーの住吉美紀さんが50代の入り口に立って始めた、「暮らしと人生の棚おろし」を綴ります。

「会う人によって人格が変わる自分」を夫に見られるのが恥ずかしい...それでも私が “自分が好きな自分”でいられる理由【住吉美紀】_img0
 

人生の節目節目で会いにいっているインド式占星術のT先生を、夫と結婚してから訪ねたときのことが忘れられない。

T先生は占い師というよりは、インド式占星術のディープな研究者、どちらかと言うとオタク寄りのおじさま。マッシュルームカットの揃った前髪の下から覗く、小さいが真剣な眼差しで、鑑定表と睨めっこしながら解読してくれる。

 

初めて伺った時、2時間の鑑定の終盤で「恋愛については?」と聞いたら、「あのですね、住吉さん。私は一応何百人も鑑定してきているプロです。もしも恋愛の星が出ていたら、とっくにお話しています。ひとつもありません」と真顔で言うから、私は吹き出してしまった。ストレート過ぎる。

でも、T先生が好きな理由はそこ。鑑定相手に良く言ってあげようとか、怖がらせようとか、それによって誘導しようという気持ちが一切なく、どちらかというと、自分の解読と私のリアル人生の答え合わせが一致するかどうかを、科学者が仮説と実験結果が一致するかどうかを楽しみにするかの如く、面白がってくれる。

夫については「月の位置からして、二人は”同志”ですね。同じ方向を見ている親友、二人三脚の関係、少しビジネスライクな仲です」とまず言われ、私は「まさにそんな感じ!」と、言い当てっぷりに驚いた。

「会う人によって人格が変わる自分」を夫に見られるのが恥ずかしい...それでも私が “自分が好きな自分”でいられる理由【住吉美紀】_img1
夫と共に屋久島登山。杉に囲まれて。夫婦の関係づくりも登山のように、一歩一歩。

次にT先生は「住吉さんは、社会や仕事で活躍する星がすごく強い人。なのに、この時期『家に入る』部屋にも同時に星がある。おかしいな、どういうことか。うーむ」と考え込んだ。

私はふと思った。「夫ができたことで、私は仕事の礎を固めた気持ちがしているのですが、関係ありますか。二人で働いていれば、収入が増減する時期があっても、ずっと何らかの形で自分らしく働いていける、というヴィジョンというか。むしろ働くぞ、という労働意欲が生まれたのですが」と言った。

するとT先生の表情がパッと明るくなり、驚くほど強く膝を打った。「それです! 家庭が仕事の基地になるということだ!」

しかし、そんな風に話した私ですら、安定した収入のサラリーマンだった夫が、その後独立して自営で仕事をしていくことになるとは想像していなかった。そして、まさか二人で会社を立ち上げて、互いの仕事を本格的に支え合っていくとは。事の運びとは不思議なもの。それぞれの仕事の状況が変わり、生活だけでなく、仕事上もパートナーとなった。結婚して8年、相棒感が増した。

ただ心配もあった。私の経験上、結婚しているしていないに関わらず、互いの仕事に口出しを始めると、だいたいカップル仲は悪くなる。自分の仕事の美学や流儀がそれぞれにあるので、これまでも同業界の人と付き合うと、互いの「こうすべき・こう変えるべき」の議論が衝突して、別れる大きな理由になったりしてきた。夫とは大丈夫だろうか。