環境や生活習慣を変えれば、謙遜さんは変化していける
謙遜さんが自分自身をほめられないのは、「自分のせい」ではありません。また、「生まれながらの性格」でもありません。
人の人格は、「育った環境や教育」「今置かれている状況」、あるいは「心身のストレス」など、さまざまな要因がからみあった結果、形成されていきます。与えられた環境を生き抜く過程で、その人なりの思考パターンや行動パターンが生まれるのです。
裏を返せば、環境や生活習慣を変えれば、今後は変化していけるということ。ですから、自分を責めたり、「ずっとこの性格なんだ」とあきらめたりしなくていいのです。
謙遜さんには謙遜さんなりの素敵らしい資質がある
もちろん、無理に変わらなければいけないといっているわけではありません。謙遜さんは、素晴らしい資質をたくさんもっています。
たとえば、自分には実力がないと思っているのは、成長意欲がある証拠。ですから、謙遜さんは誰もみていなくても努力でき、着実に進む粘り強さがあります。また謙虚なので、人に対して虚勢を張ったり傲慢になったりすることもありません。
過剰に謙遜する思考パターンをひとつの個性だととらえれば、このようなポジティブな側面もあるとわかります。くり返しになりますが、自分をほめられないことで、今もし生きづらかったりモヤモヤを感じていたりするのなら、その状況を変えればいいだけなのです。このことを、ぜひ心にとめておいていただきたいと思います。
著者プロフィール
田中 遥 (たなか はるか)さん
医療法人ベスリ会理事長・ベスリクリニック院長・心療内科医・産業医。福島県会津高校、東京慈恵会医科大学医学部卒業。ベスクリニック、ベスリTMS横浜醫院にて勤務。医師、産業医としてビジネスパーソンのメンタルヘルスに従事している。単に病気がよくなる医療ではなく、どのように生きるかを追求する医療を目指している。
加藤紘織(かとう ひろお)さん
保健師・看護師。1996年、茨城県古河市生まれ。高校卒業後、家族が病気を患い入院したことをきっかけに、人々の健康を支える看護師を志す。また保健師の資格を取得。現在、ベスリTMS横浜醫院にて、保健師、看護師として勤務。睡眠外来、PMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)などのケアに従事している。
『「どうせ私なんて‥‥‥」がなくなる「謙遜さん」の本』
著者:田中 遥/加藤紘織 飛鳥新社 1540円(税込)
「人から褒められても素直に喜べない」「失敗をするのが怖い」「『私なんか』が口ぐせ」など。日本人の4人にひとりはいるといわれる「謙遜さん」が、自分を大切にできるようになるテクニックを、具体的事例を交えて紹介します。落ち込んだり生きづらさを感じたりしたときの自分を冷静に見つめるための手引書としておススメです。
写真:Shutterstock
構成/さくま健太
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