定年後、生活の不安もなくのんびりと暮らせる時代は終わり、私たちは「定年4.0」の世界を生きている——と後藤宗明さんは語ります。リスキリングの第一人者である後藤さんは、その重要性をこれまでの著書でも説いてきましたが、新著『中高年リスキリング これからも必要とされる働き方を手にいれる』では、中高年世代がテクノロジーに駆逐されず、「これからも必要とされる働き方」とは何かを伝えています。

“悠々自適な定年後”はもうやってこない。「定年4.0」時代を生きる中高年に必要な“7つのマインドセット”とは_img0
 

本書の中で引用される、経済コラムニストとして活躍されていた大江英樹さんの本『定年3.0 50代から考えたい「その後の50年」のスマートな生き方・稼ぎ方』(日経BP)では、定年3.0に至る過程を次のように分類。

・定年1.0:生活の不安なくのんびりと暮らせた時代
・定年2.0:「老後のお金」に関する常識が大きく変化した時代のシニア像
・定年3.0:「お金」「健康」「孤独」の3つの問題をそれぞれが解決していかなければならなくなった

そんな定年3.0を経た今、「定年4.0」はリスキリングで現在の雇用に頼らない人生とキャリアを自ら創造する時代である、と後藤さんは分析しています。そこで今回は本書から、リスキリングと共に必要になる「定年4.0」時代のマインドセット”について、一部抜粋してご紹介します!

 

定年4.0の時代に活躍するために必要なこと

“悠々自適な定年後”はもうやってこない。「定年4.0」時代を生きる中高年に必要な“7つのマインドセット”とは_img1
 

今後、時代が定年4.0へと移り変わる中で、リスキリングしながら成長産業への労働移動を実現していこうとしたら、すべてが今まで通りとはいかず、新たな習慣を身につける必要に迫られることも出てくるはずです。

そんなときに役立つのが、「マインドセット」「スキルセット」「ツールセット」という考え方です。これは、海外では頻繁に聞くアプローチで、この3つが整う状態を作り出すことが目標を達成するために必要だと言われています。

定年4.0時代に対応していくための3つの「セット」


リスキリングを進めていく上で、この3つに共通する「セット」という言葉はとても重要な意味合いを持ちます。

なぜかというと、新しい成長分野の仕事に就くというのは、一時的なやる気(マインド)、単体のスキル、特定の学習(ツール)だけで成果が出るようなプロジェクトではないからです。

●「マインド(Mind)」と「マインドセット(Mindset)」の違い

マインドは「心」や「精神」という意味で、人の思考、感情、意識などを指します。一方で、マインドセットは「考え方」や「心構え」という意味で、物事に対するアプローチや態度を形づくる信念や前提などを指します。

この2つの違いをわかりやすく表す例として、ある問題に対する対応を考えるとき、「その瞬間感じていること」はマインド、一方、「その問題をどう捉えるか」「どのような視点でアプローチするか」といった中長期的に示すものがマインドセットです。例えば、困難に直面したとき、一時的に落ち込む状態はマインドですが、「困難を乗越えるためにどうしたらよいか」といった姿勢はマインドセットになります。

●「スキル(Skill)」と「スキルセット(Skillset)」の違い

スキルは、「特定の活動を行うために必要な能力や技術」を指します。これは一つひとつの具体的な技能を意味します。スキルセットは、「複数のスキルが組み合わさった一連の能力や技術」を意味します。通常、特定の職業や活動を効果的に行うために必要な、幅広いスキルの集まりを指します。

例えば、コミュニケーションというスキルがありますが、プロジェクトマネージャーとして成功するためには、コミュニケーション以外にも組織運営、リーダーシップなどの複数のスキルが揃っていることが必要です。

●「ツール(Tool)」と「ツールセット(Toolset)」の違い

ツールとは、「特定の作業や任務を遂行するために使用される具体的な道具や装置」を指します。一つのツールは、一つの機能や用途に特化していることが多いです。一方、ツールセットは、「複数のツールが一組になったもの」で、広範囲の作業や複数の関連任務を効率的に行うために使われます。

例えば、家具を組み立てるときに「ドライバー」という単一のツールが役立ちますが、家具の組み立てから修理までを広くカバーするためには、ドライバー、ハンマー、水平器、メジャーなどを含むツールセットが必要となるわけです。