症状ばかり見て、母自身を見ていなかったことに反省した
——にしおかさんの『ポンコツ一家』は、認知症のお母さん、ダウン症のお姉さん、酔っ払いのお父さん、ということ以上に、家族史というか、家族一人ひとりを描いているんだなあ、と感じながら読みました。
にしおか:認知症、ダウン症もですがそれぞれの症状を正しく知ることは大事だと思います。でも私は時々、症状ばかりを見て、本人をしっかり見ていなくて、ハッとし反省することがあります。母が何を考えているかとか、何が好きか、どんな風に生きてきたから、今、きっとこんな行動をとるのかなって想うことのほうが大切な気がします。想ったところで「クソババア!」と言ってしまうこともありますが。それでもです。誰しも認知症になる可能性はあります。もし私が認知症だったら、私自身を見てくれてないと寂しいです。
これからもきれいごとにしない、盛らない、正しく書く
——ちなみに今回も前作のように、起こった出来事をリアルタイムに書くのではなくて、少し時間を置いてから書かれたんですか。
にしおか:そうです。『ポンコツ一家2年目』は主に2022年に起きたエピソードです。
振り返りながら書くと、頭の中が整理整頓されると聞いたりしますが、私は全然無理です。腹が立つことを書くときは、そのときを思い出して同じくらい腹が立ちます。わからないなあと思うことは、今も同じ気持ちなので、わからないと書きます。
——自分を過去に引き戻す作業の中で、しんどくなることはないですか。
にしおか:しんどくなります(笑)。つらい話のときは「ずしーん」ときます。でも、きれいごとではないので。家族が言ったセリフはなるべくメモを取るようにしています。盛らない、正しく書くっていうことだけは、ぶれないようにしたいです。ウチの家族が誤解されるのも嫌ですし、認知症やダウン症の方がこんな行動をとるんだと間違って認識されるのも嫌です。
——次は『ポンコツ一家3年目』を計画中ですか?
にしおか:はい、ぜひ出したいです。貪欲にいきます!
認知症の母、ダウン症の姉、酔っぱらいの父、そして元SM女王様キャラの一発屋女芸人。家族全員を愛をもって“ポンコツ”と表現する、にしおかすみこさんのエッセイ2作目。久々に実家に帰省したにしおかさんが目にしたのは、働き者で大黒柱だった母の変化と、ゴミ屋敷化した実家だった——。実家に戻って母、姉、父と一緒に暮らすことを決めたにしおかさん。その2年目は家族の個性、内容、魅力が更にパワーアップ。“ポンコツ一家”のかけがえのない日常を綴る、笑って泣ける家族の物語。
撮影/赤松洋太
取材・文/金澤英恵
構成/山崎 恵
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