ダンプ松本は、間違いなく一流で伝説のヒール

「世の中の罵詈雑言を食って生きていく」恵まれない少女が伝説の極悪ヒールに。『極悪女王』が描くダンプ松本の生き様_img0
ダンプ松本の圧倒的な存在感に、熱狂に包まれる試合会場。(写真:Netflix)

芸能人を取材することが多いのですが、「スターっているんだな」と強く実感するときがあります。芸能界なんて、そこらへんにいたら目立ち過ぎてしまうような原石が集まってひしめき合っている世界。その中にいてもなお、存在感とオーラですべてを持っていってしまう人っているんです。それはやっぱり生まれ持ったもので、努力でまねできるようなものじゃないんですよね。

ダンプ松本は、スターになりたかった。スターの星の下に生まれなかった人が、どうやったらスターになれるのかを考えた結果、悪行の限りを尽くすヒールという結果になったのかな、と思ったりします。でも、迷惑系YouTuberみたいに過激なことをやったって、すぐに飽きられるし、誰だってスターになれるわけではありません。ダンプ松本は日本中から敵視されたけれど、多くの人の心を惹きつけ、とんでもない数字を叩きだし、スターになりました。なんでも極めれば芸術で、ヒールにはヒールの美学があるんだろうな、と思います。それはもう誰にも真似できない境地。ダンプ松本は間違いなく一流で伝説のヒールでした。

 

彼女たちは土壇場で覚醒し、限界突破していく


「好きなように生きたやつが勝ち」というセリフもでてきますが、ダンプ松本はまさに好きなように生きた人に見えました。もちろん、その背後には計り知れない葛藤や重責、格闘があったのだろうと思います。覚悟とプライドを持って嫌われ役を全うした姿勢には頭が下がります。

「世の中の罵詈雑言を食って生きていく」恵まれない少女が伝説の極悪ヒールに。『極悪女王』が描くダンプ松本の生き様_img1
俳優の捨て身の覚悟で挑んだ、魂のこもった演技に興奮しきりの『極悪女王』……。(写真:Netflix)

痛いのやグロいものが苦手なので、プロレスには触れてこなかったのですが、『極悪女王』の中で繰り広げられる俳優たちの全力のプロレスがあまりにかっこよく、観ていると身体の奥底が熱くなり、血が沸き立つような感覚を覚えます。やっぱり人って、究極の状態に追い込まれたときの、感情が剥き出しになり露わになった様に心を突き動かされるのだと思います。ダンプや長与は、血を見たときや追い込まれたとき、後がないときなど、土壇場で覚醒するんです。限界を超えて、眠っていた本能を呼び覚まし、暴れまわる。その姿が他では得られない興奮を生むんです。

俳優の捨て身の覚悟で挑んだ、魂のこもった演技に興奮して血がたぎり、最後は感動で胸がいっぱいになる。ストーリーに引き込まれ、何度も胸を揺さぶられる。そんな名作です。

作品情報)
Netflixシリーズ「極悪女王」
Netflixにて独占配信中
「世の中の罵詈雑言を食って生きていく」恵まれない少女が伝説の極悪ヒールに。『極悪女王』が描くダンプ松本の生き様_img2

文/ヒオカ
構成/金澤英恵
 

 

「世の中の罵詈雑言を食って生きていく」恵まれない少女が伝説の極悪ヒールに。『極悪女王』が描くダンプ松本の生き様_img3
 

前回記事「1日11時間寝ないと生活が破綻…体力ない・虚弱体質ライターふたり「1日8時間週5労働前提は無理がある」」>>