劣悪環境からの念願の引っ越し。心が晴れたと思いきや…

「引っ越しうつ」に「テレワークうつ」...いい変化なのにメンタル不調が起こるのはなぜ? “気分がずーんと沈む”経験をした私が専門医に聞いてみた_img0
 

まずは、人生で初めての一人暮らしです。

貧乏生活が長かったので、ずっと格安シェアハウス暮らしを続けていました。都内でも家賃は共益費込みで3万円台と破格。その代わり治安は悪く、住人同士のトラブルは絶えませんでした。さらに、エアコンがなくて熱中症になったり、トコジラミが大量発生したり、ほこりが酷くてハウスダストアレルギーになったり、雨漏りで床に湖ができたり……とにかく本当に環境が劣悪でした。ストレスで体調を崩し、入院を経験するほど。それでも引っ越すお金がなくてずるずる続けたシェアハウス生活に、終止符を打つある事件が起きたのです。

最後に住んだシェアハウスはめちゃくちゃ壁が薄くて、どんなに小さな音も隣に筒抜けというところでした。ある夜PC作業をしていると、下の住人が怒鳴りこんできたのです。「うるさいんだよおおおおおおおおおお」と耳をつんざくような喚き声。身の危険を感じました。PC作業をするくらいで音は出していなかったのに怒鳴りこまれたので、息を殺して生活するようになりました。その怒鳴りこんできた住人は日中、ずっと何かを殴るような“ドコッ! バコッ!”という音を頻繁に出していて、ものすごく不気味だったんです。

いよいよこれはヤバイと思い、知り合いが紹介してくれたウィークリーマンションに避難。追い込まれた結果、人生初の一人暮らしの物件探しをし、無事入居が決まりました。

今まで4畳など激狭な空間しかなかったのが、6畳になり、しかも誰にも侵害されない自分だけの空間があるという奇跡。物音に怯えることも、怒鳴りこまれる心配もない。はぁ、これでやっと平穏な生活が始まる……そう思ったのも束の間、思いがけない変化が表れたのでした。

引っ越し自体は、格安シェアハウス時代に何度も経験していたし、慣れていたはずでした。それに、自分だけのプライベート空間がある一人暮らしは、プライバシーもクソもなかったシェアハウス時代には喉から手が出るほど欲しかったもの。それなのに、新生活が始まると、徐々に心が沈むようになりました。

 

日中も気分が塞ぎ、心が沈み切っていた

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最初の変化は、気分の沈みでした。気持ちが塞ぎ、ずーんと沈んでいくのです。食欲も落ち、何かをする気力も沸きません。まだモノが少ないガランとした空間が心をざわめかせます。

他にも、好きだったはずの読書ができなくなる、文章が書けなくなるなどの変化が起き始めました。日中もずっと気分が塞いでいて、心が沈み切っているのです。

時間の経過とともに解決しましたが、振り返れば、急激な環境の変化により、心にも相当大きな負荷がかかっていたのだと思います。ストレスになってはいたものの、他人の生活音が聞こえることで孤独を感じずに済んでいた部分も無きにしも非ずだったのですが、急に一人っきりになり、孤独感を感じるようになっていたのかもしれません。また、知らない街の景色は馴染みがなく、部屋も今までと全く違う景色で慣れておらず、心がソワソワしていたのだと思います。

あとで知ったのですが、「引っ越しうつ」「引っ越しブルー」という言葉があるほど、引っ越しによってメンタルが不安定になる人は少なくないようです。住環境の変化って、人間にとっては大きなストレスなんですよね。先ほどの「ライフイベント・ストレス表」でも「住居の変更」は32位にランクインしています。