「唐突で強引なスキンシップ」が美しいとされる時代は終わった

部屋にあがる=性的行為同意か。男女の意識の違いにネットでも大激論。『上田と女がDEEPに吠える夜』から考える_img0
写真:shutterstock

フィクションが現実に与える影響として、番組内では壁ドンにも同意が必要なのか? というところにも話が及びました。

ひと昔よりは減ってきたかもしれませんが、いまだにドラマなどでも、初対面、またはまだ関係性が築けていない中で、突然キスをしたり、押し倒したりというシーンが、“胸キュンシーン”として描かれることがあります。強引な方がかっこいいとされた時代の名残なのかもしれませんが、SNSでは「いきなりは怖い」「現実だったら犯罪」といった声も上がるようになってきました。唐突で強引なスキンシップが美しいこととされる時代は終わったのだと思います(というか、昔でも嫌と思う人はいても、言い出せなかったのかもしれません)。

性加害事件が報道されるたびに、「後から同意していなかったと言って、お金を取りたいだけじゃないのか」「本当に嫌だったら抵抗したはずだ」「性行為をして仕事をもらうはずだったけど、上手くいかなくて同意じゃなったことにしたのではないか」「後から同意がなかったと言われれば犯罪者にされてしまう」といった声が吹き上がります。
 
こういった声があがる背景には、不同意性交等罪が新設された背景が知られていないという現実があるように思います。
 
弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ副理事長の伊藤和子さんの「刑法性犯罪規定の改正・不同意性交等罪の導入で何が変わるのか」という記事では、刑法性犯罪規定が110年間一度もアップデートされてこなかった現実、また改正が多くの泣き寝入りしてきた被害者たちの声によって実現したものであることが書かれています。

「日本の刑法ではこれまで、相手の意に反する性行為をしただけでは性犯罪が成立せず、暴行・脅迫、心神喪失・抗拒不能という要件が求められ、そのハードルが高いために多くの被害者が泣き寝入りを余儀なくされてきました」
「むりやり性交されてもこの国では加害者は処罰されず、被害者は泣き寝入り、この現実を変えなければ私たちは安全に尊厳をもって生きていけない、という思いが広がり、この事件をきっかけに、全国でフラワーデモが開催され、被害者に寄り添った刑法改正を求める声が高まりました」
「伊藤和子 刑法性犯罪規定の改正・不同意性交等罪の導入で何が変わるのか」Yahoo!ニュース

また、性的同意をめぐる日本の文化の遅れについても指摘されています。

「スウェーデンやデンマーク、スペインなどでは一歩進んで、Yes Mean Yes、つまりとっさのことで混乱したりフリーズしてNoと言えない場合でも、Yesと言っていない場合はすべてNoと受け取るべきで、相手の意思を確認しないまま性行為をすることを処罰する法改正を実現しています。加えて、諸外国では、地位関係性利用を理由とする性犯罪規定類型が導入されたり、子どもを守るために性交同意年齢が引き上げられたり、被害の実情に即して公訴時効を延長する等の改正が進んでいる中、日本が著しく立ち遅れていることがわかりました」
「伊藤和子 刑法性犯罪規定の改正・不同意性交等罪の導入で何が変わるのか」Yahoo!ニュース

日本社会は、性的同意に対する理解がまだまだ進んでいないのが実情です。今まで意に反する性行為をされても、法整備が追いついておらず、多くの人が泣き寝入りせざるを得なかった背景を考え、「性的同意」の必要性について今一度見直すべきだと思います。


文/ヒオカ
構成/金澤英恵
 
 
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