住む土地や家の大きさが、親子の距離に与える深い影響


根本 お母さんとは口ゲンカしてました?

M子 10代後半から20代はめちゃくちゃしてました。

根本 じゃあ、反抗期はけっこう激しかったんですかね? コギャル世代だけに。

M子 あー、どうでしょう……。友達と遊んで夜遅くまで帰らないとかはありましたけど、兄の反抗期がけっこう激しかったので、それを見て自分はなんとなく抑えちゃった感覚はあります。

根本 あーー、なるほどなるほど。人って思春期のうちにしっかり反抗期をやっておかないと、その後の人生まるまる反抗期になっちゃうことがあるんです。M子さんもその頃にもうちょっと金属バット振り回したり、盗んだバイクで走り出したほうがよかったかもしれないね(笑)。

M子 あははは!

根本 けっこうあるんですよ。兄や姉の反抗期が激しくて、それを見た弟や妹は自分を抑えて、後になってくすぶってしまうというケースが。だからM子さんのお兄さんも、反抗期が激しかったわりに今はさっぱりしてて、お母さんとも普通に接することができてるでしょう? 一方で、妹はずっとくすぶり続けてる。

M子 いや、本当にそうですね。

根本 家族の距離というか、親子の距離はけっこう近かったんでしょうか。

M子 どうなんでしょう、自分では分からないです。

根本 たとえばM子さん家族のように生まれも育ちも東京というお家だと、歴史を辿っていくと長屋住まいに行き着く、というようなことがあって。もともと狭い土地にたくさんの人が住んでいるから当然、家も小さい。もちろんこれは他の地域の、たとえば代々農家をやっているお家などに比べれば、ということです。ようは家が狭いために、家族の物理的な距離が近くなるってことがあるんですね。M子さんの地元は下町ですか?

反抗期がなかった人ほど親との関係がこじれやすい? 住む場所や家の大きさが、親子関係に与える影響とは【しんどい母の手放し方・第5回】_img0
 

M子 下町も下町、ド下町ですね。

根本 下町だと、ついでに近隣との距離も近いんです。たとえば学校から帰ると、隣の家のおばちゃんがコタツでせんべい食べながら相撲中継見てる、みたいな。「おかえりー、留守番頼まれたのよ〜」なんて、今じゃちょっと考えられないけど、そういうことが普通にありませんでしたか?

M子 ありました! 家のカギを忘れて玄関の前に立っていると「そんなとこ立ってないで、おばちゃんちで待ってなさいよ〜」って声かけてくれたり。

根本 そうやって基本的な距離が近いと、やっぱり影響を受けやすいんですよね。逆に農家さんでいうと、田植えや収穫の忙しい時期には子どもたちも駆り出されたりするわけです。そうやって子どもも“戦力”になると、家族との距離は近いところもありつつ、ある部分では離れる、ということが起きるんです。

家が大きいことで物理的にも離れるし、また農家さんは両親が忙しいから子どもにそこまでかまっていられなかったり、お風呂の支度は誰、というように子どもたちにもそれぞれ担当作業があったりする。そうすると、東京のサラリーマン家庭とは家族の距離感も変わってきて、比較的影響を受けにくくになるんです。

また農家さんだと父親もずっと家にいるので、親子の関係性は父と母、二人分の要素で決まってくるんですが、よくある都心のお家のように父親は仕事でいつも家を空けていて、専業主婦でないにしても家のことを母親一人で全部やっていると、やはり母親との距離が圧倒的に近くなって、子どもはその影響をモロに受けるようになります。

M子 家族との距離を決める要素に“家の大きさ”が出てくると思いませんでした……。家族との距離っていわゆる仲のよさ、みたいなことかと思ったら、そうじゃないんですね。

根本 もちろんそれもありますが、それだけで親との関係性は決まらない、ということです。またそうやって影響を受ける中でも厄介なのが、お母さんが育った時代の「男尊女卑の文化」ですよね。
 

 


ーー仲の良さだけでは測ることのできない親子の関係。母を苦しめ、さらに世代を超えて娘を苦しめるものは何なのか? 次回は「社会の風潮」が与える影響について、さらに深掘りしていきます。
 

イラスト/Shutterstock
構成/山崎恵

 


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