「おいしい情報ならこの人」という信頼厚い人気料理家arikoさんがおいしい旅話を伝えてくれるエッセイ本『添乗員ariko まだまだおいしい日本の旅』が刊行されます。おいしいもの目当てで旅先を決めることも多いというarikoさんに出版を記念しておいしい旅話をおすそ分けしていただきます。今回は旅先での朝食のお話です!
私にとっての「完璧な朝食」
旅に出ると楽しみにしているのが、その土地ならではの朝ごはん。自宅にいるときにはフルーツや甘酒入りのトマトジュースなどで簡単に済ませることが多いのですが、旅先の場合、話は別。朝から食欲全開で朝ごはんを楽しみます。そういう方って、意外と多いのではないでしょうか。
特に、料理自慢のお宿での朝ごはんは格別。前の晩、お腹いっぱいになって布団に倒れ込み、ぐっすり熟睡……からの朝風呂。熱いお湯でシャキッと目覚めた後には、きちんとお腹が空いています。
私の中での理想の朝ごはんは、もう何年も通っている湯河原の美食の宿、「石葉」でいただくもの。まず、搾りたてのみかんジュースで胃袋をスッキリ起こすことから始まります。その後に続くのは、土鍋で炊いたミルキークイーン。炊き立てのお米の香りに食欲が跳ね上がります。このもっちり甘い、粒だったお米をおいしく食べるためのおかずがいろいろ並んださまは、何回伺ってもウキウキした気持ちにさせられます。地物の鯵の干物にほんのり甘い卵焼き、青菜とお揚げの炊いたものに、しらすおろし。豆の味がしっかり香るお豆腐は季節に合わせて、暑い時期には冷奴で、寒い時期には湯豆腐や揚げ出しで登場します。汁物の定番は、大きなアサリのお味噌汁です。
熱いものは熱々で供されるというのも当たり前のことのようですが、やっぱり嬉しいもの。とにかくご飯を美味しく食べるために考えられた、過不足のない、まさに完璧と言いたいラインナップなのです。
器使いも真似してみたくなることばかりで、色使いや組み合わせ方など、ずらりと食卓に並ぶ様子は、“大人のおままごと”と呼びたくなります。とにかくご飯に合うものばかりなので、おかわりは必至。気がついたら二膳も食べてしまうのはいつものことです。「さすがにお昼ご飯はいらないなあ」と思いつつ、チェックアウトまでの時間、再び温泉に浸かって二度寝することほど至福の時間はない、と断言します(笑)!
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