人気カウンセラー・根本裕幸さんの連載、テーマは「しんどい母親の手放し方」。毒母育ちライター・M子のカウンセリングは、根本先生の解説、今回は「男尊女卑の文化」が母と娘に与える影響と、埋まることのない世代間ギャップについて掘り下げていきます。
〜M子の母はこんな人〜 (※前回までのおさらい)・M子に対して、幼少時から一貫して否定的な態度を取る
・M子にだけ思ったことをそのまま言ってくる、内弁慶な面も持つ
・お見合い結婚した父のことが大好き。M子の兄も溺愛している
母親の「無条件で息子が可愛い」という心理が生まれてしまう理由
M子 母親世代に染みついた男尊女卑の文化の影響、というのは、具体的にはどういう形で出てくるんでしょうか。
根本 M子さんのお母さんはお兄さんを溺愛してきたようですが、程度の差はあれど、“女親は男の子のほうが可愛い”というのはよく聞く話だと思うんです。でも、それってなぜでしょうか。
単純に「異性だから」というのもありますが、それ以上に、男尊女卑の価値観からの影響も大きいです。男の子を産めば「でかした」と言われ、女の子では落胆されて「次を早く」と急かされる。親族が集まる席でも男性たちは用意されたご馳走を飲み食いするばかりで、女性たちの食事はその後、しかも台所で、なんていうのも決して遠い昔の話ではありませんよね。
お母さんの時代なら今よりもっと酷かったでしょうし、そうやって“男性はそれだけで大事な存在で、女性は男性よりも大事ではない、けどそれが当たり前”という価値観が刷り込まれていれば、男の子のほうが可愛く思えてしまうというのも無理はないんです。
M子 たしかに……。兄が生まれた時、母方の祖父がそれはそれは大喜びだったらしいんですよね。祖父は私が生まれる前に亡くなっているんですが、「自分の子どもはあやしたこともないくせに、男の初孫だからって、◯◯(兄)のことは目に入れても痛くないってくらい可愛がってたんだよ」と、祖母から聞いたことがあります。
根本 周囲の反応って影響大きいですからねえ。そうやって母親が“男の子可愛い”の状態にあると、逆に娘に対してはいろいろと複雑な思いを抱えることになります。M子さんのお母さんのように、お父さんもお兄さんも大好きというなかでは、自分と同性の娘はライバル、競争相手でもあるんですね。また女同士ゆえの葛藤もあるし、さらには“甘え”もたくさん出てきます。お父さんとお兄さんのことは大好きだから、どちらにもすごく気を使う。でも娘は「女同士だから」と、男たちには言えないことをばんばん言ってくるとか。
M子 本当にその通りです! 父の実家への愚痴とか、二人にできない話だけ私にぶつけてくるんですよ。
根本 あとはお兄さんには許すことを妹には許さない、とかね。結果的にはもう差別なんだけど、お母さんが育ったのはそれが当たり前の時代。となれば、娘ばかりが何かと葛藤を抱えながら育つというのもある意味当然なんですよね。
M子 それで反抗期すら抑えこんでしまったら、そりゃしんどくもなりますね。
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