運動しても、体力がアップしていなかったら意味なし
また、この研究の中で、運動によって体力が向上したかを酸素の消費量で確認していますが、体力の向上が見られた人は、向上しなかった人と比べて軽度認知障害のリスクが低い傾向も見られました。これは、ただ運動するだけではダメで、運動により体力を向上させることが、認知機能の維持や改善に貢献する可能性を示しています。
また、他の研究でも、運動が認知機能にわずかながら改善をもたらすことが繰り返し示されています(参考文献2)。しかし、その効果がどのぐらい続くのか、どんな種類の運動が最も効果的であるかなどについては、まだ十分に分かっていません。
特に、女性や若い世代における運動の効果についてはまだはっきりと分かりません。運動の種類や強度、持続期間が結果に影響を与える可能性があり、現状では個々の状況に合わせたアプローチが必要だといえます。
運動をすると、脳の細胞が生まれ変わる
運動が認知機能に有益である理由としては、運動により血液の循環が良くなって、脳の機能を改善することが挙げられています。これにより、脳の神経細胞が新しく生まれ変わりやすくなったり、炎症が起こりにくくなったりすると考えられています(参考文献3)。
さらに、運動をする人は、運動をあまりしない人に比べて脳の容積が大きい傾向をとることも分かっています。脳の容積が大きいということは、脳の健康状態が良い可能性を示しています(参考文献4)。
そんな著者の私も、ほとんど毎日ジムでの運動を欠かさないのですが、ジムに行けない日があると、筆が乗らなかったり頭が働かなかったりするのを感じます。この原稿が書けるのも、日々の運動のおかげなのかもしれません。
このように、運動は認知機能の維持や改善に役立つ可能性がありますが、確実に効果があるとは現時点では言い切れません。その効果にはおそらく個人差もあり、運動の種類や強度によっても異なりそうです。
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