誤解①「精神的に弱い」人が「身体醜形症」になる?

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身体醜形症とはどんな病気なのか──。
よくある誤解は、「実際に醜い部分があるから悩んでいるんでしょ?」という理解です。

実際、私のところにいらっしゃる方たちは、自分のことを「ブスだ」「見るに耐えない」「見た目が許せない」とことごとく否定します。ですが、私から見て本当にブスでブサイクだと感じる患者さんには、じつは出会ったことがありません。

 

身体醜形症と診断される方の多くは、わずかな左右の目の大きさの違いや顔や頭蓋のゆがみなど、「言われてみればそうかな?」という程度の微細な欠点(という表現が適切であるかも微妙なほどの小さな欠陥)を気にしがちです。

体の先天的な疾患であることもありますが、ほとんどの場合は、誰にでもあるような左右の非対称や、その人の個性と言えるような形の特徴であったり、他人が見ても気づかない程度でしかありません。

それでも、そうした部位をきっかけにしてこの病にいたってしまうのには、性格的な傾向も関係しています。

「精神疾患」と聞くと、精神的に弱い人がなるものだろうと思われるかもしれませんが、じつはそうではありません。身体醜形症の傾向があるようなタイプの方たちの多くは、エネルギッシュで、「こんな自分になりたい」「こうしたい」などの志向性も強く、負けず嫌いで頑張り屋さんです。

自分にとっての完璧な理想像があるために、その理想像を実現できずにいる自分に劣等感を抱いてしまう。つまり、自分自身に対してとても厳しい評価を下しがちだということです。

もちろん、完璧主義の傾向がある人がみんな身体醜形症になりやすいというわけではありません。ただ、自分に厳しく、つねに完璧を求めていると、他人からの小さな悪意やネガティブな反応がきっかけで、「自分は醜くて劣っている」という自己評価につながってしまうのも事実です。

ただ、身体醜形症の傾向がある人は、強迫的な思いにとらわれてしまっている自分自身を恥ずかしいと思っている場合が多いので、自分の悩みを人に打ち明けることに抵抗感があったり、戸惑いがあったりします。

「自分の醜さ」を何とか改善しようとして、よけいに自分の顔や身体についての違和感や受け入れがたさを強めてしまうのです。