時間を確保するうえで大事なのは『いつやるか』

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黒野 「そういう時は、シンプルに『それが今の自分にとって、時間を事前に確保するほどは重要ではない』ということです。
なぜなら、もしも、『来週の木曜日の同じ時間に研究室に来たら10億円さしあげます』と言ったら、どんな予定よりもこの研究室に来ることを優先させますよね」

春香 「たしかに! 10億円もらえるのなら、どんな誘いも断って、何よりも優先して、這ってでも来ますね」
春香は笑いながら言った。
黒野 「まったく現金ですねぇ」
黒野も楽しそうに笑うと、また真面目な顔に戻った。

 

黒野 「これは時間の使い方において大事な『優先順位のつけ方』ですから、時が来たら詳しくお教えしますよ。今日の一番のポイントは、『時間もお金と同じように事前に確保しなさい=時間貯金をしなさい』ということです」

黒野はティーカップに口をつけた。そして紅茶をひと飲みすると、何かを思い出したように口を開いた。
黒野 「ちなみに、よく多くの人間が『◯月◯日までにやろう』と締め切りを決めますが、あれはダメですよ」

春香 「え、ダメなんですか? だって締め切りがないと、いつまでも延ばし延ばしになっちゃいませんか?」

黒野 「もちろん効果がないわけではありませんよ。心理学でも『締め切り効果』と言って、効果があるとわかっていますからね。ただもっといい方法がある、ということです。
そして実は、青井さんは、もうそれを実践してるんですよ」

春香 「もしかして⋯⋯。わたしが先週、時間貯金をして、それを今日使えたことですか?」
黒野 「それです!」
黒野はぴしゃんと手を叩いた。

黒野 「時間を確保するうえで大事なのは、『いつまでにやる』という締め切りを決めるだけではなく、『いつやるか』を決めることなのです。
そうすると、自動的に時間貯金もできて、今日のように気づいたら実行できている、となるわけです」

黒野は人差し指を立てて、ドヤ顔で春香のほうを見ると、図を描きはじめた。
黒野 「たとえば『来週中に会議の資料を作る』と決めた場合と、『来週水曜日の14時から16時に会議の資料を作る』と決めた場合、どちらのほうが確実に実行できますか?」

 

春香 「たしかに、いつやるかを決めていれば、あせらなくて済みそうですね。期限だけ決めるのだと、直前にあせってバタバタしそうです。最悪、期限を越えるかも⋯⋯」
黒野 「その通りです。これは何も仕事に限ったことではないですよ。プライベートでも『今月中にお父さんのプレゼントを買う』よりも『5月13日12時にお父さんのプレゼントを買いに行く』のように、いつやるのか、日時を決めたほうが実効性が増して、ムダのない時間の使い方ができるようになるんです」

春香 「たしかに。先生の言っていることはわかるんですけど⋯⋯。
たとえば今日は先生と約束したから時間を確保した、というのもありますよね。人と約束したから実行できたと思うんですよ。だから、自分1人で考えるためだけに、時間を事前に確保するかな⋯⋯と考えると、確保できなかったかもしれません」

黒野 「なるほど。ではなぜ、自分1人で考える時間は重要ではないのでしょうか?」
春香は考えるように天井を見上げた。
春香 「そうですね。もっとほかにもやることがあるって考えるからです」

黒野 「では、『自分の人生の時間を投資してどんな結果を得たいのか考える』より重要なこととは、何なんでしょうか?