今、世界で、そして日本社会において、子どもを持たない人が増えています。
 


OECD(経済協力開発機構)のデータベースで見て「50歳の時点で子供がいない=生涯にわたって子供を持たない女性」の割合が、日本は27.0%(2020年)と先進国で最も高い。(東洋経済ONLINE 日本人50歳女性「27%が生涯子供いない」の示す事 未婚、貧困、子育て難、不安、価値観の多様化
 


また、BIGLOBEがおこなった「子育てに関するZ世代の意識調査」では、「将来、子どもがほしくない」というZ世代は45.7%にのぼりました。一方で、先日放送された「『子どもがいない世界』がやってくる?」(NHK)という番組では、少子化が進む世界各国を取材した専門家が、決して子どもがほしくない人が増えているわけではなく、子どもを望みながらも、さまざまな理由で持てない現状があると言及していました。

 

同じ「子どもを持たない」にも、グラデーションがあり、個々人の事情は千差万別です。子どもを持たない人の中には、本当は欲しかったけど持てなかった、最初から子どもが欲しくなかったという人がいますし、子どもが欲しくないといっても、本当に一切子どもや出産に興味がない人もいれば、子どもは欲しくないと思っているけれど、もしもっと違う社会だったら欲しいと思えたかもしれない、という人もいるでしょう。

 


子どもを持つという選択のその先


そして、こういった議論で見落とされているのが、実際「子どもを持つ」という選択をした人たちがその後どうなっているのかということです。当然子どもを持てばみんなが幸せになるとは限りません。

子どもを持った人の心境――中でも、“親になった後悔”にスポットをあてた『母親になって後悔してる』(オルナ・ドーナト/著 鹿田昌美/訳 新潮社)という本があります。イスラエルの社会学者、社会活動家であるオルナ・ドーナト氏が、「もし時間を巻き戻せたら、あなたは再び母になることを選びますか?」という質問に「ノー」と答えた23人の女性にインタビューした内容から構成されています。

最近日本でも、小説家である金原ひとみさんが、「子供は可愛いし後悔はない、しかしそれとは別の次元で、人をあれほどまでに追い詰める育児は、この世にあってはならないと断言できる」(朝日新聞デジタル 母の仮面が苦しいあなたへ 「自分」は今もそこにいる 金原ひとみ)と綴った記事が話題になったことが記憶に新しく、喜びだけではない「親になった苦悩」を公で語ることができるようになりつつある社会の変化を感じます。