大草編集長と大森の対談も今回が最終回。これから先のミモレはどうなっていくのか、その展望を語り合いました。

「あなたはあなたのままでいい」。
このメッセージが100年続くように……
変化することは前を向くこと

大草編集長から大森編集長へ。ミモレのこれまで、そしてこれから 【全3回 後編】_img0
 

大森 実は、大草さんが退くことを発表されて、手厳しいご意見をいただくこともあったんです。「自分が望むか望まないかに関わらず、そういうふうに見られる立場になるんだ」と痛感しつつ、大草さんというインフルエンサーの次は誰がなるにしてもつらいんだと開き直ったりなんかもして。スティーブ・ジョブズが余命幾ばくかのときに、後継者のティム・クック(アップルの現CEO)に「スティーブ・ジョブズだったらどうするかは考えるな。君が思う正しいことをやればいい」と言ったという記事を読んだことを思い出しました。なんだか、自分に言われた気分にもなり、「ジョブズ、ありがとう」という気分にすらなりました(苦笑)。

大草 あはは! 私はぜんぜん心配してないよ。

大森 テレビCMに出演されるような方とサラリーマンである自分のタレント性をなぜシビアに比べられてしまうのかということへの言い訳をずっと自問自答していたんです。そこできちんと腹落ちさせないと、ずっと逃げ続けてどんどん苦しくなるだろうな、と思って。

大草 大森ちゃんは責任感が強いから(笑)。変わらなきゃいけないときだと思うの。ミモレも私も大森ちゃんも。私はずっと、「人と比べない」、「あなたはあなたのままでいい」、「年齢を重ねることは楽しいこと」とメッセージを発してきたけど、その価値観が100年続きますようにって、本気で思っているから。大きな出版社が立ち上げたほぼ初の、撮り下ろし・書き下ろしのメディアが発信したことが100年後の女性までも楽にしてあげられたらいいなって。だとしたら、100年残るメッセージを作っていかなければいけない。そうなったときに、さっきも言った通り(前回の記事参照)、メディアは水のように柔軟に形を変えていかないと100年なんて残っていかないと思う。

大森 そうですね。ミモレの価値観は普遍的であっても、手法は随時アップデートしていきたいと思っています。Webマガジンの編集をしていると、同じことを続けるだけでは後退しているような感覚になるんです。それは雑誌の編集者時代にはまったくなかった感覚で。だから、ミモレにとって良い進化とは何かという問いにこれからもストイックに向き合っていきたいと思います。

大草 そう。そこを自分で咀嚼して、おそらく腹落ちさせていくという作業が、また新しい価値観や女性像を生んでいくんだと思う。そういうことを経ていかないとメディアなんて100年も続かない。私が持っている価値観だけで続けていたら、10年ももたいない、きっと。それじゃ意味がないと思うから。日本の女性がもっと楽になって、他人軸を自分軸に取り戻してほしい。大森ちゃんは、いつもそれを真剣に考えているから、すごくいい意味でミモレをドラスティックに変えるんじゃないかな。それが今からすごく楽しみ。

大森 「あなたはあなたのままでいい」というコンセプトを大草さんから聞いた時から共感していましたし、年齢を重ねるのは素晴らしいことであるというメッセージも本当に好きで。だって、そうじゃないと、これから死ぬまでの人生が暗黒になってしまうじゃないですか(笑)。それを伝え続けることで、少しでも多くの女性たちが、ラクになったり、楽しくなったり、勇気がでたり、幸せになったり。そんなお手伝いをしていると考えたら、ワクワクするんですよ、単純に。

大草 ファッションだけを媒介にするんじゃなくて、ビューティとか生き方とかキャリアとか、他ジャンルも充実してくるよね。きっと。

大森 そうですね。私が編集長になったら、そこが顕著に変わる部分なのかもしれません。女性メディアではあまり取り上げてこなかったような題材や切り口の記事を展開したいな、と今いろいろと画策しています。もちろん、読者の皆様からの反応で、ファッションがもつパワーは充分に体感しているので、ファッションコンテンツはさらに強化していきたいと思います。ミモレはイベントが多いので、本当にたくさんの読者の方と交流する機会があったじゃないですか(編集部注:3年間で全国各地、大小含めて100回のイベントを開催)。その中で、とてもおしゃれで素敵な方が、「私にはスタイルがないから」っておっしゃられたことがあって、「こんな方でも自信がないんだ」とビックリしたんです。今日、明日のおしゃれをやりすごす術はすぐに提示できても、もしかしたらそれだけでは足りないのかもしれない。「だったら、どうすればいい?」って、最近はずっと自問自答しています(笑)。

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大草 大森ちゃんのそういう繊細さと頭の良さは、私とは劇的に違うところ。大森ちゃんの葛藤というか、責任を自分に落としていく作業は、すべての人が抱えていることだと思うの。仕事のことだったり、家庭のことだったり……大森ちゃんの中の自問自答が、ミモレをもっと進化させると思っています。私はたくさんの収穫を手に旅立つわ(笑)。

大森 ちょっと、最後の別れみたいに言わないでくださいよ(笑)。今後もコンセプトディレクターとして関わっていただくんですから。でもね、大草さんが、仕事を通して私のことをよく分かっていったとおっしゃってくれたように、私も大草さんのことをよく分かっていって、意外に早く気づいたんですよ、「あれ、この人は、そんなに長くミモレの編集長でいるわけじゃないな」って(笑)。

大草 結構早い時期から大森ちゃんには匂わせていたよね。最初は、私個人の口から発していたことが、今はもうミモレというメディアの声になっていると感じているから、もう私が先頭に立たなくてもいいかな、と感じて。フリーランスなので、今後の自分のキャリアや自分が伝えたいメッセージを語るときに、もう少し自由な立場がいいかなという気持ちも重なり、ベストなタイミングだったのね。今までは先頭にいたけど、大森ちゃんが先頭をなす列の後ろにいるようなイメージかしら。

大森 会長職みたいな感じ!?

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大草 あはは! 通常の編集部って、編集長を頂点に、その下に副編集長がいて、編集部員がいてってピラミッド型になっているんだけど、社内的なことや運営管理などはすべて大森ちゃんがやってくれていたから、ミモレは編集長がふたりいるみたいな感じだったじゃない。家庭でいえば、父親と母親みたいな。「子供の前では悪口は言わない」とか、そういう家庭間であるような細かな暗黙のルールはたくさんあったような気もするけれど、最終的に、私たちの関係は愛とリスペクトで成り立っていたなと思います。

大森 そうですね。父親と母親の役割というのか、攻守の役割というのか、今回の編集長交替は、そういう役割がゴロリと入れ替わり、新しい関係性に発展するということなのかもしれません。

大草 ミモレでは、これまでスタイリストとして使ってきた手以外の筋肉をたくさん使わせてもらったなと思っています。立ち上げ当初、ちょうど私自身もおしゃれ更年期のトンネルに入ったところだったから、それをどうやって皆さんとシェアしていこうって。スタイリストという立場で三段上からものを投げるようなことは、当時の私には自信がなくてできなかった。自分が迷っていたから。ミモレでその気持ちを皆さんに公開して一緒に考えていけたことは、自分にとってもすごくよかったと思っていて。トンネルを早く抜けるきっかけにもなったから。今度はそこで培ったことやセオリーをアウトプットしていこうと思う。私のキャリアは第5フェーズまであると思っていて。

大森 キャリアのピークを60歳にもっていくって、昔からおっしゃってましたものね。

大草 そう。だから、今はまだ第2フェーズの終わりなの。第3フェーズに入ったときに、もう一度スタイリストとして手を動かさなければという気持ちが大きい。ミモレでもコラムの他に、定期的にファッションページでリアルな提案をやらせていただく予定だよね。すべて撮り下ろしで。

大森 はい! 引き続き大草さんのメッセージをきちんと読者の皆様に発信できるファッション企画になればいいなと思っています。

大草 他にも新しいコンテンツが増えるよね。

大森 スタイリストの風間ゆみえさんや服飾ディレクターの岡本敬子さん、熊倉正子さんなどをはじめ、ミモレの価値観に賛同してくださる方々と新しいコンテンツを展開するつもりです。今の段階では、新しい価値観が増えていくことは、ミモレのメッセージが薄まることではなく、メッセージをより強固にさせることができると考えているので。「いろんなおしゃれがあるな。では、私のおしゃれってなんだろう?」という問いかけを自然にしてもらえるような雰囲気をつくりたいんです。そして、ジャンルを超えて、読者の方々と楽しい未来をもっともっと共有していける場にしていきたいと考えています。


7月から始まるミモレの新たなステージ。明確なのは、決して後ろ向きではないポジティブな変化だということ。これからもミモレを楽しんでいただけるように、そして、少しでも皆さんの未来を明るく照らせるように、スタッフ一丸となって頑張っていきます! 新生ミモレも応援していただけたら嬉しいです。
 

撮影/目黒智子 取材・文/榎本洋子

 

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