独自のファッションセンスで、タレントやモデルをはじめ、ミモレ世代の女性たちからも圧倒的な支持を集めている、人気スタイリストの風間ゆみえさん。前回のインタビューに続き、葉山での暮らしや、近年興味を持って勉強しているという体やフィトテラピーについてお話を伺いました。

【風間ゆみえさんインタビュー②】おしゃれも身体も、変化の時に〜自分と向き合い、心地よく暮らす〜_img0
風間ゆみえ 1971年生まれ。スタイリスト。多くの女性ファッション誌で活躍し、近年はブランドディレクション、バイイング、商品プロデュースなど、その活動の幅を多方面に広げている。著書に『LIKE A PRETTY WOMAN』、『Lady in Red』他。


「私は幼少期から身体があまり丈夫なほうではなく、体調を崩すことが多かったんです。そんなことから、若いながらも少しずつ食に気を使うようになっていきました。偏食気味だった私ですが、20歳くらいのときに祖父が懐石料理に連れて行ってくれたんです。四季の食材が彩られた懐石料理が驚くほど美しくて、苦手だったものや食べたことのないものもありましたが、丁寧に作られたその料理に箸をつけないなんて、作った方にも申し訳ないような気持ちにさせられて、食べてみるととても美味しかったのを今でもよく覚えています。私の人生で大きく影響を受けた、食の第一ターニングポイントでしたね。笑」

 

不調を抱えていたから体に興味を持った


懐石料理を「美しい」と思ったことから食事が楽しめるようになったとは、独自のビジュアル世界を作り上げる風間さんならではのエピソード。そして、不調を感じることも多かったことから、体のことや食養について勉強し始め、フィトテラピーは昨年から学校にも通っているという。

「私も含めて、まわりには不定愁訴を抱えている女性たちがすごく多いんです。頭痛や冷え、PMSやプレ更年期とか、不調を当たり前のように話すけど、みんな辛いわけです。それがなかったらもっと幸せに暮らせるのだから、少しでも改善するといいなって。食養などの自然療法や韓国の伝統医学である韓方(ハンバン)、中医学などはとても難しく、まだまだ触り程度ですが、いろいろ学んでいるところです。何かに偏らず幅広くいろんな角度から学ぶことで、それぞれの良さを暮らしの中に活かしています。特にフィトテラピーは香りが好きだったことや、植物療法士の森田敦子さんの人柄に惹かれ、お話を聞いてさらに興味を持ち、学校に通って学んでいるほど。学んでみてわかったのは、それぞれに見解の違いはあるけれど、根本として共通するのは“陰と陽”という考え方。太陽と月があり、北極と南極があって、男と女がいる。世の中はそういうバランスで成り立っているので、何かに偏るのではなく、すべてはバランスをとること、中庸であることが大切だと知りました。今流通している食べ物については、知れば知るほど食べることが怖くなることもあるけれど、私たちの体は本当に寛容でよくできていて、暴飲暴食さえしなければ、消化吸収・排出して、また整えていくことができるんです。私も随分神経質になった時期がありますが、食べものを良い悪いで判断するのではなく、摂り入れ方に気を使い、笑顔で食事をいただくことが一番大事だと思うんです」

 

摂るだけでなく“出せる体”であることが大切


現代は健康になるために何かを摂ることが主流ですが、風間さんは「排出できること」がすごく大切だと思っているそう。

「呼吸でいうと『吸って〜、吐いて〜』の順が馴染み深いと思います。が、私は吐くことが先の呼吸、それはお腹もぺたんこに、身体中のいらないものを絞り出すイメージで吐き出し、ふっとお腹の力を抜いて必要な分だけ自然に入ってくる、という呼吸を時おり意識してするようにしています。呼吸でするデトックスみたいなものかな。今はわりと誰もが健康に意識を向けて身体に足りないもの、良いとされるものを摂ることに躍起になっていることが多いように思います。私も何か良いものと聞けば試してみたくなる好奇心に常に侵されがち(笑)。ですので、今に至っても、気づけば摂るほうに意識が向きがちですが、学べば学ぶほど、私たちの身体はかなり精密で優秀だったりする。その持ち合わせた機能を正常に働かせられるように、なるべく自然の営みに寄り添い暮らすことが大事なのだと知りました。出せる身体であること。溜め込んだままでは、せっかくいいものを摂っても吸収を妨げることになってしまいます」

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植物療法士・森田敦子さんのもとで学んだフィトテラピーは、1年通った学校を今年8月に卒業予定。フィトメディカルアドバイザーの資格も取得したそう。

 

“おばあちゃんの知恵袋”は日本のフィトテラピー


「葉山にある自宅の庭にも、ヨモギやどくだみ、ツワブキなど、沢山の野草が生き生きと育っています。ウグイスが鳴き出す頃には、柔らかいヨモギの新芽を摘んでお餅やご飯に混ぜていただいたり、桜の花が散る頃には、葉がかたくなったヨモギを干して煮出して足湯に使ったりと、同じ植物でも季節によって活用の仕方が違ってくるのも面白いですよね。うちの庭には私の知らない活用できる薬草が沢山あることも、ご縁あって葉山の自宅に来ていただいた薬膳料理のオオニシ恭子先生に教えていただきました」

フィトテラピーとはつまり植物療法のこと。日本の暮らしにも昔から根づいている自然療法がそれ。ヨモギ、柿の葉、どくだみ、ハトムギ、露草などをお茶にして飲んだり、夏の定番・麦茶には汗で失われがちなミネラルが含まれているなど、“おばあちゃんの知恵袋”がまさに日本のフィトテラピーだと、風間さんは言う。

 

自分が学んだことをみんなと共有したい


「だけどそれは今の時代、都会に暮らす女性たちが実践するには難しいこともあるんですよね。それをどう暮らしに取り入れたらいいのか、そしてどうしたら情報共有できるかということを、常に考えるようになりました。例えば夏の冷え対策に私が実践しているのは、“ヴァンルージュ”という赤ぶどうの葉のティザンヌ(ハーブティー)を飲むこと。赤ワインの300倍のポリフェノールを含むと言われ、血液循環を良くする抗酸化作用の強いハーブで、特に女性におすすめです。また、夏に?と思われるかもしれませんが、一日中エアコンのもとに身体を置いているなら、仙骨の部分にカイロを当てたりすることもおすすめしたい。気づかない冷えが身体に根深いダメージを与えるので、女性に冷えは厳禁。夏の温浴、足湯でもかまいません、一日に一度は身体の巡りを良くしたいものですよね。不定愁訴ってほとんどが長い時間をかけてなったものだから、少しずつ同じ時間をかけていくこと、毎日のことが大切だと思います」

 

”幸せ”の秘訣は身体も思考も柔軟に


「私も葉山に暮らすようになってから、そのコントラストにより、都会の良さも再確認でき、自分に合うものもわかってきたんだと思っています。20代~30代を経て、40代の今もいろいろと新たな経験を重ねている時期。また、暮らしはもちろん、身体の内側も外見も変化していくのは当然。環境を変えたり、旅に出たり、身体の不調と向かい合ったり…そういう様々な経験から、取捨選択して何かに偏り過ぎることなく、楽しめることを、バランスを崩してもやんわりと肩の力を抜いて、休憩してまた歩き出すような、柔らかな感覚を持つことが良いのだと思います」

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暮らしもおしゃれも身体も。日々変わり続ける自分に真摯に向き合い、答えを出すことをあきらめない風間さんのインタビューはいかがでしたでしょうか。ミモレでは、風間さんの連載エッセイが今月からスタート予定です! 風間さんご自身の言葉で綴られる、日々の暮らしと身体のエピソードが満載。どうぞお楽しみに! 

風間ゆみえさんインタビュー①はこちら>>


撮影/三瓶康友
ヘア&メイクアップ/菊地美香子(TRON)
取材・文/内田いつ子 構成/朏亜希子(編集部)