「ねぇ、メンズっぽいビッグジャケットを羽織ってるのと女らしくスカーフを巻いているの、どっちが私らしい?どっちが似合ってる??」
楽しいランチ中、何かを思い出した友人が、突然深刻な顔つきで言った。
聞けば、今度仕事で手伝うイベント用にと、スタッフ全員お揃いでごくごく普通の白いコットンシャツとブラックパンツが配られたらしい。
「スタッフにもおしゃれさが欲しいから自分らしく着こなして、って言われたの。これって難題だと思わない?すごく迷っちゃって。」
ふむふむ、どちらもお似合いだしどちらを選んだってとってもおしゃれで彼女らしい。そもそも彼女の心の中ではとっくに心づもりができていて、その背中を押して欲しいようだった。
私はうんうんと相槌を打ちながら、今の自分ならと思いを馳せてみる。
クシャッと被れるハンチング帽、やたらと高いヒールの靴、お気に入りのバッグ、腰まである長い髪…。
これまで色々なものを自分のトレードマークのように駆使し、毎日の着こなしのアクセントにしてきた。
でも今の私ならお揃いのスタッフ服に最初に合わせるのは一択。
迷いなく、大きめの揺れないイヤリングだ。
小さな頃から、少し大きめのイヤリングをつけている祖母の姿が大好きだった。
パリでちょっと品のいいカフェに足を運べば大抵、大きめのイヤリングをした素敵なマダムが赤ワインを片手に友人と語り合っている。
歳を重ねた人ほど、それをつけた姿はとても女らしく華やかに、でも上品に私の目に映り、いつしか憧れのアイテムとなっていた。
でも、若くしては決してサマにならない。
20代の時にトライしてみたら、まるで「ウエストサイドストーリー」の舞台から飛び出してきたような、レトロなコスプレ風になってしまった苦い思い出だってある。
ところが嬉しいことに、ここ1,2年、やっと違和感がなくなってきたのだ。
いや、実際はまだまだ早くて、きっと、40代から50代、60代と年々しっくりくるようになるのだと思う。
本当に板についたら、厳選されたマイスタンダード服にイヤリングだけという、潔いけれど優雅なシンプルスタイルにもいつかトライできるのでは思うと、楽しみで仕方ない。
だからもっと似合うその日のために。
ドレスしか見ていなかったヴィンテージショップでもまずイヤリングから。
少しずつ集めながら、歳を重ねた自分の姿を想像してニヤケてしまう。
なんて幸せな収集なのだろう。
さあ、貴女がスタッフ服を着るなら、何を足しますか?年を重ねることを楽しみにさせてくれるアイテムはありますか?
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