話題になっていたので発売後すぐに購入していたのに、しばらく“積ん読”しておりました。数日前やっと手に取り、読み始めたらあまりのおもしろさに一気読み。途中「もう読み終わってしまう」と名残り惜しくなりつつも、読了後「なんで買ってすぐに読まなかったんだ!」と後悔(!?)し、「この夏読んだ本の中でいちばんは?」と聞かれたら、迷わず「これ!」と答えたい一冊です。
著者のはらだ有彩さんは、開けると老人になる玉手箱を何の説明もなく贈る「浦島太郎」 の乙姫、毎晩好きな男の家の周りをうろつき殺してしまう「怪談 牡丹灯籠」のお露……ストーリー上ではファムファタルとも捉えられてしまいがちな昔話の女性たちをピックアップ。そんな彼女たちのエピソードに耳を傾け、軽妙に「なんでやねん!」的ツッコミを入れながら彼女たちに寄り添っていきます。
昔話は人間によって作られ、人間から人間へと伝えられてきました。長い時間をかけて受け継がれた物語には、人々の願いや思惑が降り積もります。作者や、語り手や、読者は知らず知らずのうちに登場人物に「果たすべき役割」を背負わせます。彼女たちから「役割」を取り払い、素顔を覗き込んだとき、そこにいるのは私たちと変わらない一人の女の子———血の通った一人の人間なのではないでしょうか? 〜「はじめに」より〜
たくさんの昔話が取り上げられていますが、併せて物語も紹介されているので、前知識がなくても問題ありません。時代の価値観が彼女たちに付加してしまったのであろう「役割」や「常識」を、優しく丁寧に、そして軽やかに取り除いていきます。「あ、そんなふうに読み説いたのか!」と思う著者の柔軟な視点、想像力に膝を打ちながら、疑うことなく素直に物語を受け止めすぎていた自分にガッカリしながら(苦笑)、私の場合は読み進めることに。
現代に生きる私たちも物語の登場人物同様、はたまたそれ以上にたくさんの「役割」を社会から背負わされています。でも、もしかしたら、背負う必要がないものもたくさんあるのかもしれません。新たなる常識が生まれるであろう未来から見れば、「なんでそんなことに縛られているの?」とツッコミを受けることもあるのかもしれません。
“普通”という同調圧力に「このままだと、私、ヤバいのかもしれない」という気持ちになることは誰にでもあるはず。そんな時に「昔々、マジで信じられないことがあったんだけど聞いてくれる?」と、昔話の中の女性たちが軽やかなガールズトークをしかけてきてくれます。気の合う女友達と(時空を超えて)出会い、互いに「わかる、わかる~!」と言い合うことで心がフッと軽くなる、そんな爽やかな読後感をぜひ!
現代をたくましく乗り越えて、今度は私たちが幸福な昔話になる日を夢見て〜「はじめに」より〜
今日のお品書き
セレブウォッチャーのさかいもゆるさんが本日紹介している映画『クレイジー・リッチ!』は、「アジア系俳優を起用した映画は収益を上げられない」という説を覆し、全米で大ヒット。あまりの人気に続編準備との報も! 個人的には、原題『CRAZY RICH ASIANS』の“ASIANS”は残しておいて欲しかったな〜、と思っておりますが、いずれにせよ公開が楽しみです♪
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