例えば大根やにんじんを切る時に出る皮は、最初から“捨てるもの”だと決めつけていませんか? 普段、当たり前のように捨てている食材の端っこも、「捨てるもの」という意識を変えてみると、豊かな食生活が広がります。
料理研究家の有元葉子さんに、著書『「使いきる。」レシピ』より、私たちの食材への価値さえも変わる「しまつ」な台所術について教えていただきました。
「思い込み」を取り払うと、食が豊かになる
野菜の皮は捨てるものと、誰が決めたのでしょう。皮は皮でおいしく食べる“知恵”や、皮には皮のおいしさがあることを知る“豊かさ”が、私たちの生活をよりよいものにしてくれます。“もったいないから”ではなく、“おいしいから”皮や葉もいただくのです。
どちらも主役、どこも主役、まるごとが主役です。
野菜の皮と同じく捨ててしまいがちなしいたけの軸なども、味付けを変えれば、ごはんのお供にもなり、パスタの具材にもなる便利な一品です。
しいたけは軸もおいしい
しいたけは軸もおいしい。いいえ、むしろ傘よりもうまみが強くて、軸の方が私は好きなくらいです。捨ててしまうなんて考えられません。切り落とすのは、軸の下のほんとうの5mm程度、土のついている石づきのかたい部分だけです。
しいたけの軸のブルスケッタ
見ても、何だかわからない。食べてもきっと、正体はわからないでしょう。だけれど、コリッとして、濃厚なうまみがあり、噛みしめるほどにおいしいのです。しいたけの軸だけをのせたブルスケッタ、やみつきになるひともいます。ものは試しに、まずは作ってみてください。
1. しいたけの軸は細かく裂きます。
傘の裏側の、軸の根元の周りを親指でギュッギュッと押さえると、軸がきれいに取れます。ちょっとかたいですから、軸だけで食べるときは手で細かく裂いて使うのがおすすめ。
2. フライパンを熱してオリーブオイル大さじ1をひき、しいたけの軸を炒めます。きのこは油を吸いますので、オリーブオイル少々を上からも回しかけて。軽く水分がとぶ程度にサッと炒めます。
3. バゲットはカリッと焼き、切り口ににんにくをこすりつけます。オリーブオイルをたぷりかけて、2をのせます。粗塩をパラパラとふり、好みで黒こしょうをひいていただきます。
●きんぴら風にピリ辛味で炒めれば、ごはんのおかずに。スープの実にもよし。オリーブオイルで炒めて、パスタの具にもおいしい。ごく細かく裂いた軸を、軽く塩、こしょうした豚のしゃぶしゃぶ用肉できっちり巻いて天ぷらやフライにすると、ちょっとしたご馳走に。しいたけの軸がおもてなしの一品になります。
『「使いきる。」レシピ 有元葉子の“しまつ”な台所術』
有元 葉子 著 1500円(税別) 講談社
「“買って、捨てる”暮らしはもうやめにしましょう」。
ものをとことん使いきる。食材もそう。野菜の葉っぱも皮もおいしく食べることで、わたしたちの暮らしは本当の豊かさと楽しさを取り戻す。
有元葉子のおしゃれな生活の根っこある“しまつ”の哲学。大ヒットの前著『使いきる。』の実践篇であるこの本には、ひとり・ふたり暮らしでもおいしく「食べきる」ヘルシーですてきなレシピや知恵が満載。
『「使いきる。」レシピ 有元葉子の“しまつ”な台所術』のほか、料理、ファッション、ダイエット・美容など講談社くらしの本からの記事はこちらからも読むことができます。
講談社くらしの本はこちら>>
構成/庄山陽子(講談社) 写真/中本浩平
・第2回「食材の捨てる部分が実はおいしい!「なすの皮」のきんぴらレシピ」はこちら>>
・第3回「鮮度が落ちる前においしく食べきる!半干し野菜の方法~きゅうり編」はこちら>>
有元 葉子
料理研究家。専業主婦時代、3人の娘の母として、家族のために日々作る料理の面白さに目覚め、いつしか料理研究家に。すぐに役立つレシピ同様、「本当にいい道具が少ないから」と、メーカーと共同開発するキッチン用品「ラバーゼ」で、もの作りにも真剣に取り組んでいる。
著書には『「使いきる。」レシピ』『毎日すること。ときどきすること。』(ともに講談社)ほか多数。