毎回、各業界の識者やコラムニスト、世界のニュース記事による、ミモレ世代が知っておきたい記事をお届けする新カテゴリー「社会の今、未来の私」。今回は、『「これから」をときほぐす教養 from 現代ビジネス』の記事でお馴染みの経済評論家の加谷珪一さんによる家庭の「窓」についての記事をお届けします。
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何もしなくても熱が失われてしまう「窓」


日本の住宅と欧米の住宅には、大きな格差があるといわれています。特に大きいのが家の断熱性で、日本の家と欧州の家を比較するとその違いは歴然としています。家を高断熱にすると冷暖房費が劇的に安くなることに加え、室内の温度差が少なくなり、住環境が快適になるのですが、家の造りが違うことについては、今さらどうしようもありません。

しかし、家の断熱性は、家を建てた後からでも、マンションを購入した後からでも、場合によっては賃貸住宅でも、改善することが可能です。熱が逃げる最大の経路となっている「窓」に対策を施すことで、かなりの効果が得られるのです。

日本の住宅は欧米の住宅に比べると低い断熱性能しかありませんが、特にひどいのが「窓」で、一般的な日本の住宅の窓は、先進各国はもちろんのこと、最近では中国の住宅より劣っているケースも出てきています。

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窓の断熱性能を示す数値にU値(単位面積あたりどの程度の熱を通すのかを示す指標)というものがありますが、アルミ製のサッシに単板ガラスを使った一般的な窓のU値は5~6程度といわれています。マンションのリビングに1800mm×2000mmの引き違い窓が2セットあり、外気温との差が15℃と仮定した上でざっと計算すると、逃げていく熱量は650Wにもなります。つまり日本のマンションでは、何もしなくてもヒーター1台分の熱が窓からただ失われているのです。

寒い冬の日、エアコンをつけているのに足元が冷えたままなのは、大量の熱が窓からダダ漏れになっているのが原因です。足元ヒーターなどを付ければ、対症療法にはなりますが、根本的な問題解決にはなりませんし、何より電気代のムダといってよいでしょう。

大量の熱が失われる窓だけでも高断熱のサッシに交換できれば、住宅の断熱性能は飛躍的に向上します。

 

電気代だけではない「内窓」のメリット


マンションなど集合住宅は、規約の問題でサッシを交換できないケースも多いと思いますが、たいていの場合、内窓の設置が可能です。比較的断熱性の高いサッシの場合、先ほどのU値は3程度と半分になりますが、これを単純に電気料金に換算すると年間で4万円以上も違う計算です。

この金額は、無駄に捨てたエネルギー量を単純に電気料金に換算した数字なので、現実に節約できる金額とは異なりますが、筆者が実際に試した結果とは大きく違っていません。

筆者は自宅マンションに断熱性の高い内窓を設置しましたが、年間5万円ほど電気代が安くなりました。内窓の設置に30万円ほどかかりましたから、投資資金を回収するためには6年かかる計算です。

しかし筆者と家族にとってはそれ以上の大きなメリットがありました。部屋の住環境が劇的に良くなったのです。

断熱性が高い部屋の場合、エアコンは弱い風量でも十分に効果を発揮します。真夏に温度を28度と高めに設定しても個人的には少し寒いくらいですし、何より音が静かで不快な風をがありません(しかも内窓には防音効果もありますから、外の騒音もほとんど聞こえなくなりました)。

これに加えて床と天井の温度差がほどんとなくなりました(実際に計測したところでは1℃~1.5℃程度に収まっています)。これまで妻は足が冷えるという症状に悩まされていましたが、内窓を設置してからは、それがすっかりなくなったのです。

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さらにいえば窓の結露もほぼ消滅しました。筆者の部屋は角部屋なので、真冬の寒い日には窓がよく結露したのですが、内窓設置後は、窓が曇ることはありますが、結露でびっしょりということはありません。窓を拭く手間が省けているのはもちろんのこと、カビなどにも効果を発揮しているのは間違いありません。

確かに30万円の出費は安くないですが、実際に電気代を節約でき、エコロジーに貢献し、住環境も大幅に改善したという現実を考えると、これは投資対効果の高い支出だと思います。

もし家の中の温度差が不快と感じているなら、ぜひ窓の断熱を検討してみてください。賃貸の人でも諦めてはいけません。性能的には完璧とはいきませんが、一部には賃貸でも設置可能な内窓も販売されていますから、調べてみる価値はありそうです。


(この記事は2018年9月30日時点の情報です)