「なんか急に秋っぽくなったよね、私どうしよう!9月も終わるのにまだ何も秋服買ってない!」
前日よりぐんと気温が低くなったある日、表参道で信号待ちしている時に偶然聞こえてきたこの声に、私は心の奥底で大きく頷いた。
うんうん、その、季節の移り変わりにこみ上げてくる正体“不明の焦り”とってもよく分かりますとも。
毎年サイズアウトする子どもでもあるまいし、着る服がないなんてありえない。
去年着ていたものだって残っているはずなのに、なぜか服がないと感じて、私も少し前までは毎シーズン、同じように叫んでいた。
何か買わなきゃいけない強迫観念に駆られてしまうのは、本当は着るものがないというより、新しいシーズンのトレンドものを持っていないという出遅れ感。または、1年前のこの季節、1シーズンで飽きてしまうようなトレンド色の強い服ばかり買ってしまっているせいかもしれない。
どちらにしろ、ファッションを扱う仕事をしているとはいえ、毎度トレンドに翻弄されすぎている証拠。なんとなくは気づいていたけれど、はっきりとそう確信してから、焦りの周期がやってこなくなった。
そう、トレンドを程よく取り入れて素敵に見えるのは、自分らしさの軸があるからこそ。
でも、世の中は素敵な服で溢れているし、この情報社会、素敵な服を纏った人を目にする機会も多いから、軸なんていうものはかなりの頻度で見失いがちなのも確か。
だから何かが違う、と迷ったり見失ったりしたとき、また、トレンドの取り入れ方が分からないとき、自分なりのスタイルを立て直すために私が定期的にしていることがある。
それは、いわゆるウィンドウショッピング。
誰もがする当たり前の行動のようだけど、ポイントはその周り方。
まずはできるだけたくさんのショップが並ぶファッションビルに行き、1フロアをぐるっと。
各ショップに立つマネキンの服は念入りにチェックし、少し時間があれば、興味のあるなしに関わらず、すべてのショップに入ってみる。
ここでいいと思うものと出会っても買わずにぐっと我慢しセカンドステップへ。
ファッションビルを出たらそのまま向かうのは、トレンドとは少し距離を置いた独自の世界観を持つ、自分にとって不変のミューズと思えるブランドやショップ、1〜2店舗。
その憧れの世界観に足を踏み入れた瞬間、やっぱり素敵!私はこの世界の人になりたい!なんていう気持ちとともに、今までの焦燥感がすっと消え、落ち着きを取り戻したら、この日は何も買わずにおしまい。
家に戻る道すがら、さっき見たあのトレンドは私の憧れの世界とは違うなーとか、やっぱりあの服は欲しいなーなんてとても冷静に判断できて、次の日から、トレンドと自分なりの定番との購入バランスが自然とうまくいくようになるのです。
新しい服を買ったり、こういうものが欲しいと探したりするのは、結局いつものお店やネットになっていい。
でも、漠然と何かが欲しいと思うシーズン始めの今こそ、誰かの言葉を介した雑誌やSNS、ネットからではなく、まずは実際に触れてみる。
このひと手間があればトレンドに惑わされすぎないけれど時代に置いていかれることもない。
そして何より、誰かの目を通してではなく「私が好き」と自分を主語にしたスタイルが出来上がる唯一の方法だと感じる今日この頃。
さあ、貴女の憧れの世界観はどのブランドですか?秋の服、何から始めますか?
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