毎回、各業界の識者やコラムニスト、世界のニュース記事による、ミモレ世代が知っておきたい記事をお届けする新カテゴリー「社会の今、未来の私」。今回は、『「これから」をときほぐす教養 from 現代ビジネス』の記事でお馴染みの経済評論家の加谷珪一さんの予想する「金利の種類」についての記事をお届けします。
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このところ地価の上昇傾向が顕著になってきたことで、首都圏を中心にマンションの価格が高騰しています。「賃貸」か「持ち家」かというのは常に論争の的となるテーマですが、今回は「持ち家」購入には避けて通れない、住宅ローンについて考えてみたいと思います。

住宅ローンを利用する場合、実際の購入金額に加えて、多額の利子を支払う必要があることは多くの人が理解していると思います。利子の金額は借り入れの期間が長ければ長いほど多くなりますし、金利の水準がどの程度なのかによっても変わってきます。

したがって住宅を購入する際には、物件の価格そのものに加え、金利の動向について注意を払っておく必要があります。

 

現在、首都圏における新築マンションの平均価格は6000万円に迫る勢いです。しかし10年前の2008年における同一条件の平均価格は約4800万円でした。つまり10年間でマンション価格は1200万円も上昇しているのです。

ここまで価格が上がっても、何とかマンションを買うことができているのは、驚異的な水準まで金利が低下したからです。

2008年当時に4800万円のマンションを30年の固定ローンで購入したと仮定すると、金利は3%程度でしたから、返済総額は約7300万円となります。つまり元本のほかに利子を2500万円も払っていたわけです。
現在、同じマンションは6000万円に値上がりしていますが、この物件を30年固定ローンで購入すると、今の金利は約1.7%程度ですから、返済総額は約7700万円と計算されます。

マンションが1200万円も値上がりしているにもかかわらず、返済総額が400万円しか増えていないのは、超低金利によって利子の負担が減ったからです。

マンションを買う人にとって、超低金利は強い味方だったわけですが、この水準がいつまでも続くというのは通常、考えにくいことです。実際、今年の後半に入って日本の金利はジワジワと上昇を始めています。もし、金利が10年前の水準に戻ってしまった場合、6000万円のマンションを買うためには、9000万円以上も返済しなければなりません。

これを聞いて、すぐにマンションを買わなければと思った人は注意してください。

今のタイミングで銀行に住宅ローンの相談に行くと、ほぼ100%の確率で変動金利型の商品、もしくは固定期間選択型の商品を勧められるでしょう。これらの商品は、金利の上昇に合わせて返済額が増えるタイプの商品ですから、金利が上がると一気に返済が苦しくなります。

特に注意すべきなのは固定期間選択型です。

一般的な変動金利型の住宅ローンには、金利が上昇した際の緩和措置が組み込まれています。金利が上昇しても、5年間は月々の返済額が維持され、その後、返済額が上がっても1回の見直しあたり25%の上昇にとどめるという内容です。この措置があることで、金利上昇時においても、急に返済額が増えて支払い不能になるという事態を避けることができます(一部の商品には組み込まれていませんから、商品ごとに確認が必要です)。

もっとも、この措置はあくまで一時的なものであり、不足した返済分は、ローン終了時に一括して返済を求められるケースが多くなっています。

 

今の金利で何とか返済できても、さらに金利が上がった場合には、その分だけ返済額が大きく増えることに変わりはありません。

特に固定期間選択型の場合には、こうした措置がない商品が多くなっています。

固定金利の期間が終了し、変動金利に移行した時点で、金利が大幅に上昇していた場合、金利上昇分だけ一気に返済額が増加しますから特に注意が必要です。

金利の将来動向を予想することは、筆者のような経済の専門家でもなかなか難しいことです。しかし、今、日銀が行っている量的緩和策というのは、非常時に行う特殊な政策ですから、現在の超低金利が未来永劫続くというのは現実的ではありません。

金利が上がることを前提に固定金利でマンションを買った方がよいのか、少々危険であっても、金利が上がらないことに賭けて変動金利(もしくは固定期間選択型)で借りた方がよいのか、あるいは、賃貸のままでいた方が得策なのか、住宅の購入について検討している人は、そろそろ決断すべきタイミングが近づいています。

(この記事は2018年10月13日時点の情報です)