いつか日本を飛び出して外国で暮らしてみたい。漠然とそう考えている人は多いと思います。メディアでも著名人の海外生活が紹介されることがよくありますし、ブログで自身の体験を綴っている人も少なくありません。
しかしながら、海外で暮らすことには多くのハードルがあり、実現するのはそう簡単ではありません。しかも国によっても様々で、実際に海外生活をしている人に詳しく聞かない限り、このあたりの事情はなかなか見えてきません。今回は海外生活の現実について考えてみたいと思います。

 

近年はグローバル化という言葉がキーワードになっており、多くの人が自由に各国を行き来しているイメージがあります。確かに旅行や出張というレベルではその通りなのですが、外国で生活するということになると、話は変わってきます。

例えば米国は移民の国として知られており、多くの人が米国に渡って生活しているイメージがありますが、現実はそうでもありません。わたしたちがフラッと米国に行って生活することは基本的に不可能です。

観光旅行で米国に行く場合には、ビザなし渡航ができますから、パスポートと航空券さえあれば米国に入国できます(ただしWebでの事前申請が必要)。しかし観光目的で入国した場合には、基本的に3カ月(90日)しか滞在できません。それ以上、滞在してしまうと不法滞在となってしまいます。

一方、現地で働く目的で入国すれば長期滞在が可能ですが、このためには就労ビザの取得が必要であり、ハードルが一気に上がります。ビザの種類にもよりますが、現地の会社に正式に就職が決まり、その会社がビザの手配をサポートしてくれるという状況でなければ、就業目的で長期滞在することは難しいと考えてよいでしょう。

これは米国に限らず、どこの国でもほぼ同じであり、就労目的での入国には厳しい審査がありますから、パスするのは容易ではありません。

では現地に就職した人以外で、長期滞在している人はどのようにして入国しているのでしょうか。

もっとも手っ取り早いのは、現地人と結婚して家族になることです。結婚することは長期滞在の最短距離といって良い方法ですが、それ以外の人はどうなのかというと少し話が微妙になってきます。

よく見かけるのが語学留学など、学生の身分で入国することです。

 

就学という形であれば、学生であるうちは滞在することができますから、数年という期間であれば、現地にとどまることが可能となります。あくまで目的は学業ですからアルバイト以外の仕事をすることはできませんし(米国の場合、細かい条件があります)、見つかれば処罰されることになります(これを隠れ蓑に就労している人もいるようですが・・)。

海外暮らしの猛者の中には、普通に観光目的で入国し、期限が来る度に隣国に一時出国してすぐ戻るという方法で実質的に長期滞在している人もいます。しかし、短期間の入出国を繰り返す行為は、不法滞在とみなされる可能性があり、場合によっては強制退去となる可能性もあるので、基本的にやってはいけません。

このほか、国ごとに様々なビザが用意されており、それぞれに厳しい要件が設定されています。もし本当に海外で長く生活したいと考えるのであれば、自身の状況と照らし合わせて、適切なビザを取る必要があり、この作業にはかなりの忍耐と努力が必要です。
 
小説家の辻仁成氏は、15年以上もパリに住んでいますが、ビザの取得にはかなり苦労したそうです。辻氏は、映画監督や小説家が所属するフランスの職能団体に入ることで芸術活動の実績をアピールし、10年間ごとに更新できる居住者カードを手にしたそうです。

ではもう少し簡単に海外生活ができる方法はないのでしょうか。もしこれを読んでいるあなたが、年齢が高めだったり、多少のお金がある場合には、何とかなるかもしれません。

一般的に、単純労働に従事する外国人は、国内労働者の職を奪うので来て欲しくないと思っている国がほとんどですが、こうしたリスクのない人の移住については歓迎する国もあります。具体的には年金生活者や一定以上の資産を持っている人です。

東南アジアや欧州の一部の国は、一定以上の資産を持つ人や、現地の不動産を購入した人、あるいは日本で年金をもらっていて、現地で働く意思がない人などに、長期間滞在できる特別ビザを発給しています。米国も50万ドル(5500万円)以上の投資という高い条件が設定されていますが、EB5という実質的に永住権を付与する制度があります。

物価が安い東南アジアでは数百万円から長期滞在が可能な国もありますから、こうした制度を利用すればお手軽に海外で長期滞在することができます。

(この記事は2018年10月21日時点の情報です)