そもそも私は、前任の桜美林大学で総合文化学科演劇コースの立ち上げに際して、AO入試、推薦入試については、すでにグループワークを採用していた。その実績を買われて私がリーダーに指名された。
まず桜美林で行っていた試験は、以下のようなものである。
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桜美林大学2000年度推薦入試 試験問題
以下のシチュエーションから好きなものを選んで、エチュード(寸劇)を作りましょう。
・話し合いの過程や皆さんの発想も評価の対象になりますから、自分の意見だけを押しつけるのではなく、また他人任せにもしないで、いい作品にするにはどうすればいいかを積極的に話し合いながら作品を創ってください。
・話し合いの時間と、実際の練習との時間配分に気を付けてください。
・男性は男性、女性は女性を演じてください。
先生など、君たちの年齢から離れた役は作らないでください。グループのメンバー全員を登場させてください。
・発表の制限時間は五分です。
・机と椅子は用意してあります。身の回りにある小道具は使ってかまいませんが、できるだけ「無対象演技」(例えばコップがないのに、あるように飲む)は避けてください。
・発表の際、台詞が覚えきれないときなどは、メモなどを見ながら演じてもかまいません。ただし、あまり決めた台詞にこだわらず、のびのび演じてください。
・自分たちが、ふだん、仲間内でどのような会話をしているか、また他人がそこに入ってきたときに、会話の内容がどのように変化するかを考えながら創作してください。
・登場人物、配役を先に決めた方がいいでしょう。
・参考プロットはあくまで参考ですから、この通りに進める必要はありません。ただしあまり時間がないので、話し合いのたたき台として参考プロットを利用するといいでしょう。
・はっきりした「オチ」はなくてもかまいません。発表のときは、終わりのときに「終わりです」と言ってください。
シチュエーション1
高校のクラブの部室に、新入部員がやってくる。
課題
・何部でも構わないので、何部かが台詞によって判るようにする。
・新入部員(一年生)、二年生、三年生を必ず登場させる。
・部員たちの中に必ず、クラブ活動や恋愛、進路などで問題を抱えている人を登場させる。
参考プロット
①部室で、数人が、普段の日常会話をしている。誰かが抱えている「問題」が、少し明らかになる。
②そこに新入部員がやってくる。部についての説明など。
③遅れて、他の部員がやってくる。「問題」が少しふくらむ。
④新入部員退場。
⑤再び日常の会話に戻る。
シチュエーション2
高校の生徒会役員室に、あるクラブから予算を増やしてくれと頼みにくる。
課題
・何部でも構わないので、何部かが台詞によって判るようにする。
・一年生、二年生、三年生を必ず登場させる。
・生徒会の役員の中でも、意見の対立が起こるようにする。
参考プロット
①生徒会室で、数人が、普段の日常会話をしている。誰かが抱えている「問題」が、少し明らかになる。
②そこにクラブの代表がやってくる。予算についての説明など。
③遅れて、他の役員がやってくる。「問題」が少しふくらむ。
④クラブ代表退場。
⑤再び日常の会話に戻る。
シチュエーション3
友達同士で行く卒業の記念旅行に、一人だけ妹(あるいは弟)を連れてくる。
課題
・場所はどこでも構わない(汽車の中、ペンションのロビーなど)が、そこがどこであるかが、台詞によって判るようにする。
・卒業する人間の中に恋愛や進路など問題を抱えた人、あるいは恋愛関係を入れる。
参考プロット
①数人が、普段の日常会話をしている。誰かが抱えている「問題」が、少し明らかになる。
②そこに妹(あるいは弟)を連れてきた人間が登場。なんで弟妹を連れてきたかの説明など。
③遅れて、他の生徒がやってくる。「問題」が少しふくらむ。
④誰か一人退場。
⑤再び日常の会話に戻る。
シチュエーション4
自殺した高校の同級生の葬式の帰り。一人だけ、その生徒の中学時代の友人Aが混ざっている。
課題
・場所はどこでも構わない(電車の中、ファーストフードの店など)が、そこがどこであるかが、台詞によって判るようにする。
・同級生たちの中で、友人Aを知っている人と知らない人がいるように設定する。
参考プロット
①数人(Aを含む)が、今日の葬式についての話をしている。さほど深刻ではない。
②そこに遅れて一人登場(Aのことは知らない)。Aの紹介など。
③誰かが先に帰る。少し話が深刻になる。
④Aも帰る。
⑤再び日常の会話に戻る。
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これは演劇コースの出題であったが、グループワークの本質は変わらないだろうと私は考えた。(つづく)
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