「演劇」を活用し、さまざまなコミュニケーションで教育活動を行ってきた劇作家で演出家の平田オリザさん。大学入試改革にも携わっている平田さんは、演劇を学ぶ初の国公立大として、2021年度に開校する予定の国際観光芸術専門職大学(仮称)の学長就任も決まっています。連載「22世紀を見る君たちへ」では、これまで平田さんが「教育」について考え、まとめたものをこれから約一年にわたってお届けします。
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大阪大学・リーディング大学院選抜試験(2010)
1日目 2日目 3日目
午前 集合
オリエンテーション ディスカッション 演劇創作
発表
午後 アイスブレーク
資料読み込み
小論文 演劇創作
(口頭試問) 最終面接
夜 演劇創作 演劇創作

年度によって変更があるが、大阪大学大学院リーディングプログラムの選抜試験は、ほぼ上記のようなものだった。
厳密に実際の問題通りではないし、年度によっては図のように3日間の場合もあれば2日間の場合もあったが、例えばある年度は以下のような進行となった。
まず書類で40人前後に絞られた志願者(合格予定数は20名)が午前中に大阪大学豊中キャンパスに集合する。バスでホテルに移動して簡単なオリエンテーション、特にこの試験の趣旨に関する説明を受ける。その後、昼食。

2020年の大学入試改革目前、これから学生に問われる能力とは?_img0
 

私が行う簡単なアイスブレークのコミュニケーションゲーム。休憩を挟んで、臓器売買に関する数々の資料(英語を含む)が配られ、それを1時間半で読み込んでノートをとる。次に臓器移植についての小論文(同じく1時間半)。
夕食後、8人1組のグループが発表されて、演劇創作開始。この年の課題は、

・臓器売買に関するステークホルダー(関係者)を洗い出してディスカッションドラマを創る。

というもの。まず「場所(空間)-背景(時間)-問題(運命)」を設定し、次に登場人物を考える。一つ一つの段階で私のOKが出ないと次のステップには進めない。

場所は、中核に共同体があり、そこに出入り自由な空間。
背景は、より出入り自由な時間や状況。
問題は、共同体が直面する運命。

といった解説をする。この設問に沿って例を挙げるなら、

場所-地方議会議員の選挙事務所
背景-告示の前の日
問題-候補者の子どもに適合する臓器の提供者が親戚の中から見つかったのだが、提供者が反社会的勢力と結びついていて、あとで問題になる可能性がある。

といったものになる。
この日は夜10時くらいまで演劇のグループワーク。
翌朝、昨晩とは別の6人1組のグループが発表され、前日に書いた小論文を相互に読み合った後にグループディスカッション。最後に、ニューヨークタイムズに臓器売買についての意見広告を出すというタスクをこなす。
昼食を挟んで午後は、昨晩に引き続き演劇を創るグループワーク。しかし、その間に一人ずつが呼び出されて小論文とグループディスカッションに関する口頭試問を受ける。この口頭試問のために、試験官の教員たちは昨晩のうちにそれぞれの面接対象者の小論文を読み込んでおく。

 
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