「演劇」を活用し、さまざまなコミュニケーションで教育活動を行ってきた劇作家で演出家の平田オリザさん。大学入試改革にも携わっている平田さんは、演劇を学ぶ初の国公立大として、2021年度に開校する予定の国際観光芸術専門職大学(仮称)の学長就任も決まっています。連載「22世紀を見る君たちへ」では、これまで平田さんが「教育」について考え、まとめたものをこれから約一年にわたってお届けします。
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これまで未来の大学入試【2】と【3】で、四国学院大学の新制度入試についての取り組みを紹介した。
いったん、問題を整理しよう。
2000年代後半から、日本では、大学志願者の総数が、大学の総定員数を下回るようになり、行きたい大学にこだわらなければ理論上は全員が大学に行ける時代となった。これを「大学全入時代」と呼ぶ。
小泉政権以降の規制緩和がこれに拍車をかけた。少子化で進学志願者数が減ることはわかっているにもかかわらず大学が粗製濫造されたのだ。結果として、現在、全私学の四割が何らかの形で「定員割れ」を起こしており、経営を圧迫している。
長い伝統を持つ大学は、それでも有形無形の資産があり、すぐに潰れるということはないが、地方の新興大学や無理な拡張路線をとった大学では経営危機に瀕している法人も多い。現状でも80近い法人が破綻の可能性があるという報道もあった(大阪読売新聞2018年8月25日夕刊)。一般企業と同様に吸収合併も加速度的に進むだろうと見られている。
また、地域に大学がなくなると人口減少につながるので、長野県茅野市や京都府福知山市、山口県山陽小野田市のように、私大を買収して公立化を行う自治体も出てきている。
このような危機的状況にあって、多くの大学は、まず場当たり的に生徒の囲い込みに走った。2000年代以降、AO入試や推薦入試を活用して、いわゆる「無試験入学」が増加していく。これらの入試も本来「無試験」ではないのだが、従来型の学力試験を経ないでの入学を総称してこのように呼ぶ。現状では、この「無試験入学」の対象が、すでに全大学生の五割を超えているとも言われている。
早い大学では夏休み前に合格者を出すところもある。これは決して「底辺校」だけではなく、例えば慶応大学や中央大学も8月には最初のAO入試などを実施する。
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