『中学聖日記』19歳・岡田健史 今後の俳優活動の可能性_img0
火曜ドラマ『中学聖日記』(TBS系にて、毎週火曜22:00~放送)©️TBS

「あの原作を映画化するならあの役はこの人で!」「あの俳優とライバル役で共演してほしい」

そんな“脳内キャスティング会議”を勝手に催したくなる俳優は、エンタメ好きにとっての生きる糧。TBSで毎週火曜22時〜放送中の連続ドラマ「中学聖日記」で衝撃のデビューを果たした岡田健史(19)は、まさにその類の魅力を放つ超新星だ。その理由はポテンシャルの高さにある。

芸能人を次々と輩出する福岡出身の彼がスカウトマンに発見されたのは中1の頃。野球一筋の彼の目標は甲子園だったため、芸能界への誘いをあっさりと断ったが、5年かけて口説かれ続けた末に、俳優業に挑戦することを決意したのだとか。演技の経験がほぼないにもかかわらず、「中学聖日記」で有村架純が演じる末永聖(24)と恋に落ちる中3男子・黒岩晶(15)役に、5000人の候補者から大抜擢された。

 

ドラマは現在第4話までオンエア済み。24歳の女性教師と15歳の男子中学生の禁断の恋という“設定”に対しての、「気持ち悪い」「犯罪」という批判の声が取り上げられているけれど、年齢よりも幼く見える有村架純と、180cmの精悍な美男子は、ビジュアル的にはナイスバランス。4話ラストの夜の浜辺でのキスも、まったく違和感がないどころか画になっている。

何より、黒目がちで切れ長の涼しい瞳で、聖をまっすぐ見つめるときの目力よ! そして、顎が華奢な若者が増えている昨今、やはり真剣にスポーツに取り組んで歯を食いしばってきたことが伺える、力強い顎や歯の美しさは格別だ。彼が中1で野球を辞めて芸能活動をスタートしていたら、この精悍さと繊細さを兼ね備えた造形美は存在していなかったと考えると、中高と野球に打ち込んでくれたことに感謝したい。

肝心の演技については、一生に一度のデビュー作としては、100点満点を差し上げたい。なぜならば。おそらく彼は、シーン毎に愚直かつ必死に芝居をしているだけなので、黒岩の感情表現に計算がない。それが思春期の不安定さにばっちりハマり、聖にとっての黒岩が「何をしてくるか読むことができない驚異的な存在」として成立しているのだ。滑舌や発声の拙さもまた、10代特有の喉が開かないゴニョゴニョ喋りとして非常にリアル。無色透明な新人俳優だけが放つこのドキュメンタリー性は、『リリィ・シュシュのすべて』(岩井俊二監督)の市原隼人や『天然コケッコー』(山下敦弘監督)の岡田将生、是枝裕和監督作品でデビューした子役たちに通じるものがある。

二番手でデビューしたということは、今後も脇ではなく作品の真ん中に立ち続けなければいけないということ。その宿命は、19歳の新人には酷なようにも思えるが、スポーツで精神力と体力を鍛えた俳優は逆境に強いタイプが多いので、急速に成長する伸びしろがある。逆に言うと、見ていてちょっぴりハラハラするような不器用で初々しい芝居や垢抜けなさは、意外とすぐに見られなくなってしまうのかもしれない。そういう意味でも、「中学聖日記」は見逃せない。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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というわけで、ポテンシャルしかない彼のプロフィールがこの先どのように埋まっていくかが楽しみで仕方がない。和顔の長身というところで、どことなく風貌が似ている東出昌大との兄弟役も見てみたいし、『ちはやふる』でいえば野村周平と新田真剣佑が演じたどちらの役もイケる(筆者の脳内では大会シーンでの和装を着用中。ああ、時代劇や朝ドラも絶対出てほしい…!)。文化系男子やドSキャラ、そして犯罪者役もいけそうなのは、坂口健太郎や松山ケンイチに通じる瞳の繊細さがあるからか。5年後には、バイオレンス映画『孤狼の血』で松坂桃李が演じた新米警察官役や、社会派ドラマなどで、理不尽な上司や世間に追い込まれて葛藤する姿が見たい。池井戸ドラマの青年枠ももちろんハマるし、スポーツで鍛え抜いた肉体もアクションで生かしてほしい…というように、脳内会議がやっぱり止まらない! 
 

ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。

構成/榎本明日香、片岡千晶(編集部)

 

著者一覧
 
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映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。

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文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。著書に『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社)、『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、共著に『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS)、『文化系のためのヒップホップ入門12』(アルテスパブリッシング)など。

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ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。人生で最も強く影響を受けた作品は、テレビドラマ『未成年』。

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メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

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ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。