では具体的に介護保険を利用する場合、家計の負担はどの程度になるのでしょうか。もちろん、これは要介護者の状況や、家族がどの程度、自力で世話をするのかによって様々ですが、ある程度、予想することは可能です。
現行の介護保険では、原則として1割の自己負担で介護のサービスを受けることができます(一定所得を超える場合には2割負担もしくは3割負担となります)。介護サービスにかかった費用が月10万円であれば、実際に利用者が支払うのは1万円で済みます。
しかしながら制度の財政を維持するため、サービスの利用には上限が設定されています。施設に入らず、在宅を中心にサービスを受ける場合、要介護1では月額約17万円、要介護2では約20万円、要介護5では36万円が上限となっており、これを超えた分については全額自己負担しなければなりません(つまり要介護2で25万円の総費用だった場合、自己負担分は20万円の1割の2万円に、上限超過分の5万円をプラスした合計7万円です)
生命保険文化センターの調査によると、介護にかかった費用の平均月額は7.9万円でした。これは全体の平均なので介護レベルによってかなりの違いがあり、要介護1の場合には5万6000円、要介護2の場合には6万4000円、要介護5では11万2000円となっています。
介護レベルが低い場合でも数万円、介護レベルが上がった場合には10万円以上の出費を見ておいた方がよいでしょう。特養など施設に入った場合には、金額はさらに上がり、要介護5で最低14万円程度の支出が必要となります(実際にはもっとかかるケースが多いかもしれません)。
これに加えて重要となるのが介護の期間です。同じ月数万円の出費でも、2年で終わるケースと10年以上かかるケースとでは総額が大きく変わってきます。
余命に関わる話なので非常に言いにくいことですが、介護が始まったらどの程度の期間、その状態が続くのか、ある程度の見通しを持っておいた方がよいでしょう。いわゆる介護地獄に陥る人の多くが、先行きが見通せないことによる不安心理が状況を悪化させているからです。
平均的な介護期間というのは実はそれほど長くありません。先ほどの調査によると平均的な介護期間は4年11カ月となっています。全体の約半数が4年未満の介護で済んでいるわけですが、4年から10年未満というケースが29.9%、10年以上というケースも15.9%ありますから、場合によっては長期化することも念頭に置く必要がありそうです。
職場の理解が得られない、介護費用を捻出できないといった理由から、会社を退職し、自力で介護する人も少なくありません(いわゆる介護離職)。しかし自力での介護は心身ともに相当の負担となりますから、可能な限り介護サービスの活用を考えた方がよいでしょう。
外部のサービスを活用した方が、介護する側も、される側も結果的に満足度が高くなることがほとんどです。自分だけで抱え込まず、お財布と相談しながら、外部のサービスの活用を積極的に検討するようにしてください。いずれにせよ日頃からの準備や知識が何よりの武器となるということを忘れないようにしてください。
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