脳医学者の瀧靖之先生が考える、賢い子ども。自ら「知りたい」という好奇心を持っていて、「叶えたい」と思った夢に対して努力と実現ができる子どもに育つためには、好奇心と熱中体験が大切だそうです。そして、そんな子どもたちが歩んでいく未来について、インタビューは進んでいきます。

―「好奇心」を持った子はどういう風に育っていくのでしょうか。

瀧:子どもの頃の好奇心が学びの土台となり、熱中体験が努力する姿勢を後押しし、その後の受験勉強でも好成績をおさめる子が多いはずです。

―「好奇心」は学業にも影響を与えるのですか。

瀧:もちろんです。勉強とは本来、知らないことを学べる、とても楽しくて、好奇心を刺激し、脳に一種の快感を与えてくれる物です。
好成績を出し続けて学校の勉強ができる子というのは、そうやって学ぶことが楽しい脳を持っているのではないでしょうか。
学校の勉強が楽しいわけですから、性格も明るくて前向きでしょう。前向きだから、将来の夢も描けて、学生生活を謳歌するはずです。

―小学生の頃は勉強ができても、その後成績が伸び悩んでしまう子どもの話もよく聞くのですが。

瀧:はい、成績が伸びる子と伸びない子に一体どんな差があるのか、私も以前ある大手教育機関で准教授をしていたときに疑問に思ったことがありました。
そして子どもたちの成績をぐんぐんと伸ばす、全国の名物先生と呼ばれる方々に聞いてみたんです。伸びる子伸びない子のどちらもずっと見てきている先生方が口を揃えておっしゃっていたのが、親の関わり方の違いでした。
親がどれだけ、子どもの好奇心が伸びるような環境を与えているかが影響するというお話でした。
ある時期がきて成績が伸び悩む子は、学ぶことに好奇心を持って取り組んでおらず、例えば成績が良いとご褒美がもらえるからという動機で勉強に取り組んでいた。そんな状態は長く続けられません。
一方成績が伸び続ける子は、学校での勉強が始まる前の未就学時期に「学ぶこと=楽しい」という脳に育っているから、学習内容が変わっても、ずっと前向きに成績を伸ばしていけるのだと思います。

―「学ぶこと=楽しい」という脳を持てることは、大人からみても羨ましいです。

瀧:そうですね。それに、そういうお子さんにはご両親も「勉強しなさい!」と言わなくて済むと思います。
期末テストのたびに夜遅くまで付き合ったり、根気強く塾に通わせる労力も必要ありません。幼い頃に子どもの好奇心を育て、熱中体験をさせてあげることは、受験勉強にかかるコストより安く済むのでではないでしょうか。
そこで、幼いうちから活用できるとお薦めしているツールが「図鑑」なのです。1冊2000〜3000円でしょうか。もちろん、ただ与えるだけではいけません。子どもと一緒に眺めたり、時には本物を見に出かける必要がありますが、それならご家族一緒に楽しめますよね。

―そうですね、「勉強しなさい!」とけしかけるより、よっぽど良い思い出になりそうです。本人も、進学にあたって勉強が楽しいに越したことはないですね。

 

瀧:はい。それが私は、幸せだと思うのです。
本当に自分が好きなことを見つけて、夢を抱き、その夢のための努力を惜しまない。新しいことを学び続けることを楽しむ姿勢がこれからの時代には重要なのではないでしょうか。

―今後は寿命がのびて、人生100年時代が到来すると言われていますね。100年生きるのに、学び続けることが重要なのでしょうか。

瀧:はい、長い人生を生きていくのに大切なことは、良い大学や良い会社に就職することではなく、その先々も、好奇心を持って楽しく過ごしていけることだと私は思います。
今後は、第4次産業革命により登場した人工知能に始まり、知識や情報、技術もさらに加速度的に進展していくでしょう。次々と登場する新しい物事には、「学ぶこと=楽しい」脳で向き合い続けていく必要があります。
だから、好奇心を持って学び続ける「脳育て」は、決して子どもの教育論だけではなく、私たち親世代が現代を幸せに生きていくコツなのです。
子どもに「好奇心」を持ってもらいたいと願うならば、親である私たちがまずは「好奇心」を持って生きている姿を子どもに見せたいですね。

瀧 靖之

東北大学加齢医学研究所教授。医師。医学博士。1児の父。脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達、加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。最新の脳研究と自身の子育ての経験をふまえた「科学的な子育て法」を提案している。

 

『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える究極の子育て 『賢い子』は図鑑で育てる』

著者  瀧 靖之 講談社 1400円(税別)


図鑑ひとつで、子どもの『脳』は賢く育つ! 楽しみながら、子どもの能力を最大限に伸ばすテクニックが満載。「のびのびしていても、子どもが賢く育つ」魔法のような子育て法です。

ライター/小和野薫子
イラストレーター/みついしふみこ
カメラマン/米沢耕(講談社写真部)

 

・第1回「脳科学者が教える、子供の「脳育て」の方法と適した年齢は?」はこちら>>
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