「シンプルに生きる」「丁寧な暮らし」って聞くと、憧れるものですが、実践できていますか? 「仕事や家事に追われ、それどころではない!」という人も多いのではないでしょうか? でも、忙しいことを言い訳に何もしなければ、何も変わりません。とはいえ、「やらなきゃ!」という義務感で動いたところで長続きしないというのもまた真実……。
「シンプルで丁寧に暮らさなきゃ」と気負わずに、「嫌なことを少しずつ減らして、毎日をなるべくごきげんで楽しく生きていこう」と考え、それを実践している人がいます。人気アーティスト/イラストレーター 松尾たいこさんです。「部屋が片づかない、家事が回らない、人間関係がうまくいかない 暮らしの『もやもや』整理術」(扶桑社)には、そんなヒントがいっぱい詰まっています。
ごきげんとは反対の、心が晴れない感情の
「もやもや」とは?
松尾たいこさんといえば、鮮やかな色彩が印象的なイラストを手がける人気イラストレーター。ファッション好きで、3年前からは東京、軽井沢、福井の3拠点生活を実践しており、そのライフスタイルにも注目が集まっています。華やかな仕事をして、3つの拠点を行き来する暮らしなんて自分とは違うと感じてしまうかもしれませんが、松尾さんは、
「仕事や立場は関係なく、まだ起こってもいない将来への『不安』におびえるよりも、目の前にある『もやもや』したことに意識を向けて、『まずは今をちょっとずつ変えていこう』と気持ちをシフトしてきたことで、少しずつ自分や身の回りの暮らしを変えていったんです」
と話します。松尾さんも、いろんな試行錯誤を繰り返してきたそうですが、その過程で、 「もやもや」という感情をうまく活用することで、自分の暮らしを楽しいものに変えていけることに気づいたという松尾さん。ところで、「もやもや」とはどのような感情なのでしょうか? 松尾さんは次のように考えています。
「お気に入りの服を着ていたり、仲のいい友達と一緒にいる時はごきげんで楽しいけど、部屋が散らかっていて憂鬱になったり、本当は気乗りしない飲み会に参加して疲れたりすると気が滅入ってしまうものです。このごきげんとは反対の、心が晴れない感情を『もやもや』という言葉で表現しています。とはいえ、それを取り除くためにすぐに行動に移したり、わざわざ相手に伝えたりするほどではなく、心の片すみに小さな何かが引っかかっているような、些細なんだけど、少し気になってしまう感情なんです」
そう言われてみると、みなさんにも思い当たる節はありませんか?
「もやもや」は“気づきのサイン”
まずはものを減らして整えてみる
松尾さんは「もやもや」を「なんとなく嫌だな」と思うのではなく、自分の中の“気づきのサイン”ととらえるようになりました。
「掃除を例にとるとわかりやすいですよ。リビングルームのフローリングは1日で汚れるものではなく、見た目もさほど変化はありません。でも、次第に見えないホコリがたまっていき、床はザラザラになっていきます。もし、部屋を歩いていて少し気になった時に、すぐにモップなどで軽くふいておけば、掃除機を出して掃除しなければいけない、おっくうな状態にまではならないと思いませんか?」
「もやもや」が小さければ、それを改善するための労力も小さくて済むはず。むしろ「もやもや」が小さなうちに向き合って対処しておいたほうが、何より自分のためになると指摘します。
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