私たちは1日の時間のうち、かなりの割合を通勤に費やしています。オン・オフの切り替えが出来て良いという人もいますが、殺気立ったすし詰めの電車に長時間揺られることは、精神的にも肉体的にも過酷なことであり、仕事へのマイナス面も大きいでしょう。
通勤ラッシュはどの国にもありますが、日本の状況はやはり突出しています。OECD(経済協力開発機構)の調査によると日本人の通勤時間は欧米各国の1.5倍から2倍もあり、家族と過ごす時間が半分から4分の3程度しかなく、睡眠時間も1割短いという結果になっています。通勤時間が長いため、家族との時間や睡眠時間が犠牲になっていることが分かります。
日本の職場の生産性が低いというのは以前から指摘されていることですが、これには過酷な通勤環境も影響していることでしょう。通勤だけでかなり疲弊してしまいますから、仕事の能率が上がらないのも無理はありません。
ではどうして日本の通勤時間はこれほど長いのでしょうか。当たり前といえば当たり前ですが、日本ではオフィス街と住宅地が離れており、移動に時間がかかるというのが最大の理由です。
これについては、日本は国土が狭いのだからやむを得ないという意見をよく耳にするのですが、これは先入観による思い込みである可能性が高いと考えられます。確かに日本は国土の絶対値は狭いのですが、都市部の人口密度はそれほど高くないのです。
人口密度はどの範囲で算定するのかで結果が大きく変わってきます。東京の人口密度が高いと算定されるのは、単純な行政区分での比較や、周辺都市を加えたケースがほとんどです。東京都心やロンドン中心部、ニューヨーク、パリ市といった中枢エリアで比較した場合、東京の人口密度はパリやニューヨークの半分程度しかありません。
実際、パリやニューヨークの中心部には多数の市民が住んでいますが、東京都心の夜間人口は激減してしまいます。諸外国では人が普通に住んでいるところでも、日本人はあまり住もうとしないので、結果的に通勤時間が長くなっている可能性が高いのです。
背景にあるのは一戸建て住宅に対する強い憧れでしょう。
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