夕食後は10時まで引き続き演劇のグループワーク。この間、各グループとも、2回だけ私の指導を受けることができる。どこでそのカードを切るかも、グループごとの判断に任されている。
3日目は、朝から演劇の最後の練習をし、11時から発表を相互鑑賞。さらに私からの講評や解説を聞く。
午後、一人一人が最終面接を受ける。今後の大学院生としての研究内容から、今回の試験全体を通じて自己が課題と感じたことなど、あらゆる角度からの質問を、比較的長時間にわたって聞かれる。
実は試験官の側は、前日、深夜までミーティングを行っている。それまでの小論文、グループディスカッション、中間口頭試問、演劇創作のグループワークについて採点を行い集計して40人の採点一覧を作り、特に合否のボーダーラインの学生については定性評価を行う。面接官やグループワークに張り付いていた試験官から、それぞれの学生の長所や短所の報告を受け、3日目の最終面接で質問するポイントを定めておく。
学生を解散させたあと、試験官全員で最後の判定会議を開き熟議の末に合格者を決定する。
この試験は、これまでも述べてきたように受験生の様々な資質を、様々な角度から問うものになっている。文部科学省が求める「主体性・多様性・協働性」の他にリーディング大学院なのでリーダーシップや、それを補佐するフォロワーシップも問われる。
しかし、私が何よりこの選抜試験で問いたかったのは、このように右脳と左脳をシャッフルするように使いながら、あるいは集団の作業と個人の作業を交互に挟みながら、それでも論理的な思考が保てるか、批評性が保てるかという点だった。単なるロジカルシンキング、クリティカルシンキングではなく、それがどのような局面においても発揮できるかを測る試験を作りたかった。
さらに言えば、毎日10時間以上の作業を続ける中で、それでも人の意見に耳を傾けられるか、他者に優しく接することができるかといった人間性の側面も測りたいと考えた。
このリーディング大学院プログラムは、合格すれば途上国にフィールドワークに行くといった課程が多く用意されていた。そういった場では、主体性や協働性といった能力を保持していることは当然だが、どのような局面においてもその能力が発揮できるという「実現可能性」も問われるだろう。
つづく
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