「演劇」を活用し、さまざまなコミュニケーションで教育活動を行ってきた劇作家で演出家の平田オリザさん。大学入試改革にも携わっている平田さんは、演劇を学ぶ初の国公立大として、2021年度に開校する予定の国際観光芸術専門職大学(仮称)の学長就任も決まっています。連載「22世紀を見る君たちへ」では、これまで平田さんが「教育」について考え、まとめたものをこれから約一年にわたってお届けします。
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2020年度の大学入試改革の成否は、この形骸化したAO入試を、各大学が、どこまで手間暇をかけて、本質的な改革ができるかにかかっている。

私の本務校である大阪大学は、2011年、文科省が公募したリーディングプログラムのオールラウンド型に採択された。これは博士課程におけるリーダーシップ教育のプログラムで、これに選抜された学生は、専門以外の多彩なカリキュラムの講座を受講でき、長期休暇中の海外留学も無償で提供される。さらに、手厚い奨励金も用意されている。

大阪大学では、このプログラムの採択を機に、選抜試験を使って、最先端の、せっかくなら日本初ではなく世界最先端の大学入試がシミュレーションできないかと考えた。当時まだ、文部科学省からは、大学入試改革の方向性は示されていなかったが、世界の大学入試が大きく変わっていっていることは誰もがわかっていたし、日本の大学入試がこのままでいいわけがないことも、まともな大学教員なら皆感じていた。

大学入試が最先端になっても、グループワークの本質は変わらない_img0
 

それならば、せっかく多くの研究費を使えることになったのだから、いずれ来るであろう入試改革に備えて、最先端の入試を自ら作り体験してみようではないかと私たちは考えた。そして、その先端的な選抜試験のグループワークの部分を出題も含めて私が担当することとなった。

 
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